堕落
3人でじゃんけんをした。
この裏には ラブホテルがあった。
話の流れで 先生 ラブホテルってどういうとこ?
と美緒が かまととぶって聞いた。
16歳の少女のその聞き方は少女ではなく
既にオンナだ。
沢村は ふざけて いや きっと気軽な気持ちで
『じゃ 先生と行ってみるか!』と言った。
沢村も男だ。お酒をのめば 酔っ払うし
いい気分にもなる。
そこで 3人が
『いやだ~』といえば
その話はそれで終わったはずだ。
失恋で落ち込んでいた響子は
日本酒を飲んで かなりいい気分になっていた。
だから
『はい! 先生 私 入ってみたいです!』と
いつもより1オクターブあがった可愛い声で媚びた。
そののち 私も 私も と残りのふたりが挙手をしたので
沢村も返答に困り
『じゃ おまえら 3人でじゃんけんして勝ったのといくとするか』
それも沢村の冗談だった。
沢村は賭けた。
もし 響子が勝ったら ホテルに行こうと。
沢村は 響子に興味があった。
この女 16歳のわり なんでこんなマセタ視線をするのか
疑問をずっと持ち続けていたから。
勿論 他の二人が勝ったら
冗談にして その場をオワリにして
会計して 一人で2件目に行こうとは思っていた。
16歳の女子3人は嬌声をあげて
『じゃ 3回戦で』といった。
最初はグー
じゃんけん(間があく) ポン
美緒が2回勝ち、シオリも2回買った。
響子が1回勝ち、
これは 響子は無理だろうと思っていた矢先、
響子は立て続けに勝った。
最後のチョキを見て
響子は 沢村に酔ったチョキを差し出した。
そう 例の上目遣いで。
ちょっと首をかしげて。
『せんせ カッタワヨ』というカタカナで伝えたくなるような
猥褻さを残して。
高校2年夏休みが終わった9月最初の日曜に
響子は 同級生の牧野からフられた。
理由は 同じクラスに好きな女の子ができたから。
という 心変わりが頻繁におきる思春期ならでは
の回答であった。
夏休み 響子はアルバイトして
予備校に通って それで 牧野とは逢わずにいた。
響子の母は 継母で
通常の家庭ならば
ほしいものがあった ちょっと買って
しょうがないわねえ いいよ
という流れではあるけども
響子はどうも このお願い事が言えず
アルバイトして稼いで気兼ねなく
ものを買いたかったわけで
アルバイトを海辺の観光ホテルにした
と 夏休み前に 牧野に話したら
春休みのときみたいに
俺の近所の喫茶店でよかったじゃんか
と彼は言った。
確かに あの時は
バイトが終わって 彼のケータイにメールして
『バイトが終わった』と伝えれば
『5分で迎えに行く』という日課を
春休み中 ずっとしていたわけだから。
響子のバイトが終わって 彼女の家に帰る徒歩20分
自転車を使えば たかだか10分の距離であるのに
二人は 1分でも一緒にいたいがために
わざわざ 歩いた。
そして 響子の家の裏にある
森で 椿の木や、竹や、笹、杉など生えている森で
二人は 口づけを交わしていた。
それが日課のように。
だから 夏休みもそうすればよかったのに と
牧野は 夏休み中も思っていた。
響子に会えないから 同じクラスのオトコタチと会う。
オトコタチの彼女たちも合流する。
そのうち 彼女たちの友達も合流する。
その友達 史江(フミエ)に
彼は 心惹かれた。
響子は 同級であったけども
何かヒミツめいた雰囲気を持っており
本人が気付かないだけで
男を騙しそうで その純粋な瞳を向けられたら
つい キスをしてしまいたくなる唇をもち
肌は 透き通るように白く
特に目の下が その白さに調和して
皮膚が薄く 青ざめていた。
唇から首にかけての静脈でさえも
色香があった。
勿論 本人は気付かなかったけども。
牧野の同級生たちは
『藤野響子は もう男とやっているよ 中学のときから』
と 冷やかしていたけども
実際 響子はだれもやっていなく まだバージンであった。
突然 牧野から言われた『別れ』は
響子にとってマッタク免疫がなく
彼女は 失意のどん底、地獄の果て
を さまよっているがごとく
その夜 ふらりと繁華街へ出かけた。
友人 美緒とシオリと連れ立って。
『なんだ おまえら』と
後ろから 方をたたく男がいた。
予備校で英語を教えている 沢村であった。
『やだ 先生こそ』と
女子も3人集まれば 成熟した女性のごとく
シナをつくって 流し目で男教師を見る。
立ち話を15分くらいしたところで
沢村は 気軽に
ちょっとメシでも食いに行かないか?
と3人を誘った。
沢村は 33歳、独身、長身、メガネをかけたインテリタイプで
普通の女子は 沢村を好きだというだろう。
響子は そんな沢村を別になんとも思っておらず
かえって 『自分はもててると思っているカンチガイやろー』と
心の中で 侮蔑してた。
しかし 美緒とシオリは素直に喜び
予備校外で 先生と食事なんて
ちょーうれしーというはしゃぐので
まさか 自分だけ帰ります
ともいえず 美緒 沢村 シオリと3人で連れ立つ後ろから
自分だけは世界が違いますとばかり
とぼとぼと 着いていった。
沢村は 路地に入り
暖簾をくぐり がらがらと引き戸を右にひき
180cmの長身を猫背気味にして
『よお』と店に入っていった。
明らかに
ここは 響子たちが今まではいったことのない店である。
道路には打ち水、戸の両側には
塩が盛ってあった。
引き戸の前に看板が出ていた。
『小料理 小夏』
3人は目をしばたかせ
小料理屋って よくみかけるけど
実際はどんな感じなんだろう。
響子は さっきまで
ふたりに失恋を痛手を話し
実は これから 3人で一人っ子の美緒の家にいき
父が出張、母が会合とかで 誰もいない
特に今夜は 邪魔がいないところで
お酒でも飲んじゃおう!と
漠然と取り決めていただけに
小料理やで 先生のおごり(推測)で
だったら ちょっとくらい飲んでもいいよね と
目配せした。
初めて入る『小料理屋 小夏』は新鮮だった。
まだ16歳の高校2年生だから。
居酒屋もクラブも 夏休みに経験した。
しかし 『小料理屋』とは!?
先生は 好きなものを注文して良いよ といった。
そんなことを反芻しながら
響子は 沢村とラブホテルに向かっていた。
無言だ。響子は何も話さない。
沢村も話さない。
響子はバージンであったが
牧野と それなりのペッティングの経験はあった。
夕暮れの街を見下ろし そろそろ帰る時間だねと
牧野に諭され、部屋の電気を消す。
薄暗くなった部屋で 牧野は響子を抱きしめる。
ちょっと上をむけば 牧野の唇。
響子は その唇を合わせた。
いつから舌を使うことに抵抗がなくなったのか。
いつからそれが気持ちいいということに気付いたのか。
いつから その舌が 彼女の首すじをたどり
耳を舐め、鎖骨を通って
彼の冷たい手が 彼女のシャツのボタンを上から
一個ずつあけて
第4ボタンあたりまでくると
その冷たい細い指で
そぉっと まるで 誰もいない家に足音をたてずに
忍び込む盗人のように
優しく その指は 響子の胸を触る。つかむ。
揉む。
中心にあるまぁるい突起物を触る。つまむ。
ころがす。
ため息が出る。
なんでこんなに気持ちよくなったのかしら。
響子は 牧野の背中越しに彼の部屋の壁掛け時計を眺める。
ああ もう 早く帰らないとまた 母に怒られる
と 思いながら
この行為は やめることができない。
牧野は 響子のため息で満たされ
さらにボタンをはずす。
5つ 6つ 7つ
全部はずして 彼女の胸を改めてセメる。
ああ それからそれから
彼女が首をふり いやいやをしても
それが 彼女の『快楽』であることを知っている。
だからやめない。そのまま進む。
さらにその指は 響子の足の間に進む。
性器さえ挿入せずにいたものの
二人は既に そういう関係だった。
響子は沢村とホテルに入っても
どうということもなかった。
単に私は処女膜がついているだけのからだで
単に男性器を挿入してないだけの女なのだと
認識してから。
無言でホテルに入って
無言で部屋を選び
無言でエレベーターにのり
無言で鍵を回し ドアをあけ
パタンを閉める。
それから 鍵をかけたのは 響子であったが。
その行為を盗み見して
沢村は勃起した。
セイテハコトヲシソンジル
沢村は優しく響子を抱いた。背後から。
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