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二人の構図

僕と光(ヒカル)は 所謂 二卵性双生児だ。

確か 僕たちは10才頃まで 同じ部屋だったと思う。
冬が終わった暖かいある日 
母が 光の洋服やベッドを別の部屋に移して
僕に言った。

『晶(アキラ)、今日から光とは別の部屋ね』

僕は何か、からだの一部分を持っていかれた気がした。
それまで 光とは 学校で何かあったり悲しいことがあると
一緒のベッドで抱き合って寝ていた。

ヒカルも僕も あまりおしゃべりなほうではなくて
でも お互いの気持ちが通じ合うというか
悲しいことがあると その時は何かあった? 
と、お互いに分かり合えた。

だから 彼女が僕のベッドに そうっと忍び込んでくるとき
僕は何も言わずに 彼女を抱きしめた。
それは まるで 子猫を抱いている感じで
彼女の不安を取り除いてあげたい という気持ちだけだった。

僕たちは生まれたときから 一緒の部屋だったし
幼稚園のときも 寒いときは一緒に寝ていたから
別に 子供の頃 抱き合っていたとしても
何の不思議もなかった。

そして 僕たちは時々 くちづけもした。といっても 子供がするのだから
単に唇と唇を合わせるだけの他愛も無いものではあるけども。

『ねえ あきら・・ 私たち おかあさんのお腹の中でもこうしていたのかな』
僕はそんな光の感性が好きだ。

部屋が別になったのは 多分小学校4年頃で
その頃 ヒカルは 絵画部に入った。
僕は パソコン教室。

学校の授業が終わると お互いにクラブ活動になって
部屋も違うこともあって
話すことも少なくなっていった。

中学の入学式のとき
男と女の双子が珍しいのだろう、多くの人が僕たちに関心があるようで
それと同時に 多くの同級生から話しかけられて
また 同時に多くの友達ができた。

勿論、僕とヒカルは同じクラスでも同じクラブでもなかった。
ヒカルはあいかわず 美術部で絵を描いたし
僕は僕でPCクラブに入った。

はっきりいって、双子だからモテルというのはある。
ヒカルは 上級生の男子から注目されていた。
僕の先輩から 『高橋って ふたごなんだって?妹がいるんだって?』と
よく聴かれた。

だから PCクラブに限らず、ヒカルがはいっていた美術部の先輩だって
同級生だって 彼女と仲良くしたがっていたに違いない。

僕たちが中学2年になった時、
ヒカルの絵が なんとかという部門で入選したと
母が言っていた。

僕は絵のことは あまりよくわからなかったので
『そう』といい、ヒカルと時々 顔を合わせたとき
『入選したんだって?おめでとう』と言ったら
彼女ははにかんで 笑って 『ありがとう』と言った。
やはり 彼女はあまり話さない。
その代わり 彼女独特の視線の使い方が
この頃から かなり官能めいたものに僕は気づいていた。

僕たちは思春期になり
以前よりもますます 話をしなくなり
お互いの部屋にいる時間が長くなっていった。

ヒカルは絵が入選したことで
美術部の顧問の先生から 本格的に絵を習わないかと
言われたそうで(こういうニュースはすべて母から僕に流れてくる)
どうせ習うなら 美大はいるくらいのがいいわね
と母は 父に相談していた。

そして ヒカルは本格的に絵を習うことになり
彼女の部屋は アトリエと化していった。

僕は学校で 学校のホームページを作っていた。
将来 僕はパソコンを使った仕事がしたいと漠然と思っていたので
同級生の女子から『おたく』などと 影で言われていただろうけど
そんなこと気にしなかった。

ヒカルの絵が またなんとかというので 賞を取ったとかいうと
僕たちPCクラブでは ホームページにでかでかと
『高橋 光さん(2年3組)○○展○○賞受賞』というのも作っていた。

14歳になった光は ノーブルで深い印象づいた顔に変わってきた。
色は透けるように白く 一日アトリエにこもっているので
蒼くさえみえた。
僕はそんな光に ときめいてしまった。

兄の僕でさえときめくのだから、他人の男はもっとそうなのだろう。
僕は 光に
『つきあってほしいとかって 言われたことないの?』と
廊下ですれ違うときに たずねたら
『言われたことはあるけど・・・』と彼女は僕をまっすぐにみて
その大きな瞳を伏せ、俯いた。

『言われたことはあるけど、タイプじゃない人からだからいつも断るの』
と光は言った。
『私 絵を描いているときが一番幸せなの』
光は そういいながら またアトリエに入ってしまった。

僕も光も学校の成績はよい方で
いつも学年で20番から50番以内に入っていたので
中学3年になったとき 進路も好きな高校に進学できた。

僕は普通高校の共学に進み
光は 私立の女子高に進んだ。
相変わらず 彼女は絵を選んでいた。

高校一年の夏に 光とふたりだけになった夜があった。
両親が 葬式で九州に行ったから。
本当は僕たちのひいおばあちゃんがなくなったのだから
僕たちも出席したほうがよかったのだろうけど
僕たちは期末考査の真っ最中で留守番をすることになった。

2日目の考査が終わった後
光が僕の部屋をノックした。
『あき、入ってもいい?』
僕は ドアノブに手をかけ 内側からあけた。
『なにしてたの?』

『ネットサーフィン』
『あきは ネットが好きなのね。好きな女の子とかいないの?』
『・・・』
好きな女の子ねえ。クラスに可愛い子は2,3人いるけど
告白しようという気持ちまでには 至らなかった。

だから 僕は沈黙した。

『あのね、』
光が 言葉を選ぶように ゆっくりと下を向いて
次のあのね で 僕の目をみた。
こういうところは 昔から変わってない。
何かあったんだな と直感した。

しかし 光は いつも『あのね』から 発展しない。
こういう性格だから 絵がすばらしいんだろうな。
と 僕は光の蒼い顔とまっすぐな髪を見ながら思った。

『なあに』僕は優しく答えた。
光は ゆっくりと近づいてきて
『あき、抱きしめて』と言った。

僕は 彼女を優しく抱きしめた。
まるで 10歳までそうしてたように
そのときの記憶が僕の脳を占めた。
そして また ゆっくりと彼女の髪を撫でて
光を 見つめなおした。

『わたし・・・』
光の目に涙が浮かんだ。
『わたし・・』
暫く 沈黙があり 暫く光は泣いていた。

いやなら話さなくていいじゃないか。
僕はそういった。
でも つらいのよ。
俯いた光は 僕のベッドのふちに腰掛けた。

そのような光には 昔から慣れていたので
僕は僕で 彼女に背中を向けて
パソコンでゲームを作っていた。
ゲームつくりは面白い。
自分の想定したストーリーが展開されていく。

光が突然僕の背中にしがみついた。
『あき・・ 私 男の人に抱かれてしまった・・』

僕の脳みそに稲妻が走った。雷鳴がとどろき
どしゃぶりの中に放り出されたような気分だった。
いつかは 光が他の男とそうなるだろうと予期してはいたものの
こんなに早く 光が女になってしまうなんて。
というような驚き。

僕はとっさに振り向いて 彼女の肩を強く抑えてしまった。
『なんでそんなこと僕に言うの。』とつぶやいた。

『光、好きな男だったらいいよ、光が幸せならいいよ。』
『あき、私 もう男の人はいやだ』
そうやって 彼女は泣きじゃくり、『無理やりだったの・・』
と僕の胸に顔をうずめた。

『好きな人だったけど 乱暴にされて体に傷ができたわ』
光は言った。
僕が驚くくらい このときの光は饒舌だった。
『私 小さい頃 あきに抱かれたように優しくされたかった』
『あき ねえ 私をまた同じベッドで抱きしめて』
『無理だよ、光。僕だって 気持ちを持った男だし。』
『もう 僕ら 子供じゃないんだ』
『わかっているわ そんなこと・・・ 私気づいたの』
そして 光は僕の目をまっすぐにみて
覚悟してきたように
『私 あきじゃないとだめってことに気づいたのよ』

僕は 夢中で光を抱きしめていた。
まだ16歳の僕に冷静になれというほうがおかしい。
僕たちは 何年かぶりにキスをした。
それは 子供時代のようなものでなく
離れがたく やめられず 甘美な誘惑の中だった。

心を決めて 光は僕のベルトに手をかけた。
『光、男と寝たのは 一回じゃないだろう』
『あき そんなこと言うのはやめて。私はあなたを感じたいの』
そういいながら 光は僕のベルトを緩め
僕が恍惚を感じている最中に 下着だけにしてしまった。

僕は 光が妹だということをすっかり忘れた。
光のまっすぐな髪が好きだ。
光の深い黒い瞳が好きだ。
光のちょっととがった鼻もまあるい唇も
すべすべした蒼い肌も
形のいい耳も
華奢な鎖骨も
まだ硬くて 小さな乳房も 
僕が 乳首を含んだときに漏らす吐息も。

体中が熱くなりながら 光とのことは一切覚えておこうと
思ったけど とろとろのはちみつの中にいるようだ と
感じた瞬間から そんな冷静なことができなくなり
途中 光の手を借りながら
僕は明らかに 光の中で 果てた。

この夜から 僕たちは今までの関係をすっかり変えてしまった。
僕たちが高校生になったのを機に 母はパートに出たし
父は父で 管理職になり残業が多く
家に戻るのは ほとんど終電間際であった。

僕たちは必然的に二人きりになる。
母は 光と僕に交代で夕ご飯を作るように指示したけど
まるで 新婚生活のような僕らは
一緒に夕飯を作り 一緒にお風呂に入り
一緒に光の部屋で 彼女の書いた絵を眺めたり
彼女が書きかけの絵に批評をしたり
また 光は僕の部屋のベッドで僕の愛を確かめたがったり
僕らの奔放な愛は暫く続いた。

何回か関係を重ねるうちに光の体は変わっていった。
本で読んだ限りでは
(僕は光以外の女性とは経験がなかったのでわからなかったけど)
10代ではセックス中のエクスタシーは難しいらしい。

それを光に話したら
『あきとは 昔から同じベッドで寝ていたし、遠慮がないから心配がないの』
と答えた。
そんな光がさらに愛おしくなって 僕は光に溺れた。

官能小説が学校で流行っていると 光が妖しい本を持ってきた。
『女子高って変わってるね』というと
『男子がいない分 ちょっと変よ』
僕が 光に『この部分 読んでみて』といたずらっぽくいったら
光が ちょっと頬を染め
僕は目を閉じて 聞いていた。

『光、そういうことされてみたいの?』
光は俯いた。

この頃 僕たちはお互いがお互いのおもちゃであった。
携帯メールで 今日は何時に帰る?と確認しあい
母のパート時間を気にしながら むさぼりあった。

それがいけないことだとわかっていても
この頃の僕たちには それをとめる理由が見つからなかったし
だからといって、見つけようとも認めようとも思わなかった。

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