もう一度会いに来て 2
遠野は一部上場建設会社営業部の部長だったが、昨年昇進して取締役になった。
彼は特にばりばりやる営業マンというわけでもなくいが
部下に対して非常に信頼される男という感じで、
香乃は 会社での遠野を見てはいないが おおよその察しはついた。
彼は特にばりばりやる営業マンというわけでもなくいが
部下に対して非常に信頼される男という感じで、
香乃は 会社での遠野を見てはいないが おおよその察しはついた。
そして いつまでも子供の部分が抜けず、そういうところが
女性からもてる一種の要因だったかもしれない。
女性からもてる一種の要因だったかもしれない。
普段は寡黙で、ちゃらちゃらした男でなく、曲がったことが嫌いであった。
まったく真面目を絵に描いたような性格だが
酒がはいると、普段抑制している分、本音がつい出た。
まったく真面目を絵に描いたような性格だが
酒がはいると、普段抑制している分、本音がつい出た。
今度のことも 多分、大阪の愛人と一緒に 酒を飲んで
妻とは決して別れようとしない遠野を責めたか、遠野が騙したのか
死ぬの別れるのともめたあと、どちらかが薬を持ち出し、
彼の半分夢の中でおきた事件としか思えなかった。
綾瀬は 以前から遠野の厭世的かつ退廃的なところを知っていたので
心中と聞かされても それほど動揺はしなかったが
もう彼と一緒に歩けないことが悲しかった。
妻とは決して別れようとしない遠野を責めたか、遠野が騙したのか
死ぬの別れるのともめたあと、どちらかが薬を持ち出し、
彼の半分夢の中でおきた事件としか思えなかった。
綾瀬は 以前から遠野の厭世的かつ退廃的なところを知っていたので
心中と聞かされても それほど動揺はしなかったが
もう彼と一緒に歩けないことが悲しかった。
いつかこうなるということが予感があったものの遠野が去年大阪に転勤してから
彼の仕事に対する熱意や成功を社内ニュースで聞いてはいたものの、
綾瀬が部長に昇進したと同時に連絡は少なくなっていった。
遠野と最後にあったのは、一ヶ月前の大阪出張であった。
彼の仕事に対する熱意や成功を社内ニュースで聞いてはいたものの、
綾瀬が部長に昇進したと同時に連絡は少なくなっていった。
遠野と最後にあったのは、一ヶ月前の大阪出張であった。
大阪本社の廊下で偶然に遠野とすれ違ったとき、
『綾瀬、元気でやってるか』と人懐こい笑いをうかべて
『お前 離婚したんだって』と心配そうに尋ねてくれた。
『綾瀬、元気でやってるか』と人懐こい笑いをうかべて
『お前 離婚したんだって』と心配そうに尋ねてくれた。
綾瀬が恐縮していると、
『ま、男と女ってのは 誰にも予測つかないからな。
『ま、男と女ってのは 誰にも予測つかないからな。
自分に恥ずかしくない人生を送れよ』と
笑いながら、綾瀬の肩をたたき 会議室に入っていった。
今にして思えば、あれが 遠野の遺言だったのかと思い出した。
笑いながら、綾瀬の肩をたたき 会議室に入っていった。
今にして思えば、あれが 遠野の遺言だったのかと思い出した。
香乃は 今までよくしてもらった分 彼を恨む気持ちもなく
苦しんで死んだかどうかがとても気になった。
あとで 生き残った女性に会いに行こうと思った。
綾瀬とわかれた後、遠野は香乃をとても心配してくれて
それまで以上に食事にいったり、買い物につきあったり
やさしくしてくれた。
一度 香乃が酔っ払って
『綾瀬さんは私のことを遊びだと言ったのよ』
と 遠野にすがったことがあった。
『おまえ、綾瀬の気持ちになったことあるか。』
香乃は 泣きはらした瞳で遠野をみあげた。
遠野はひとつふたつ咳をしたあと、
『あいつ、俺に好きなおんながいますから今後相談していいですか と真面目な顔で
きたことがあってな』
『だからって・・・』
『まあ 聞きなさい。かみさんはどうするんだと尋ねたところ、いずれけじめをつけ
るつもりだと言ってたよ』
『でも、結局はできなかったじゃないですか』
香乃は恨めしい気持ちでいっぱいだった。
『まあ、結婚離婚ってのは こちら側の言い分だけではどうしようもないことがある
からなあ。
あいつもお前に遊びだと 言うしかなかったんじゃないか』
香乃には 男側の気持ちはよくわからない。わかったのは、
自分だけではどうしようもできなかったということだけだった。
そして 綾瀬に 香乃と別れるにしてもなんにしても
きちんと誠意だけは見せろと伝えたらしいが
当の綾瀬からは なにも連絡がなく、まさに捨てられたとしか
思い様のない香乃であった。
『綾瀬さんは私のことを遊びだと言ったのよ』
と 遠野にすがったことがあった。
『おまえ、綾瀬の気持ちになったことあるか。』
香乃は 泣きはらした瞳で遠野をみあげた。
遠野はひとつふたつ咳をしたあと、
『あいつ、俺に好きなおんながいますから今後相談していいですか と真面目な顔で
きたことがあってな』
『だからって・・・』
『まあ 聞きなさい。かみさんはどうするんだと尋ねたところ、いずれけじめをつけ
るつもりだと言ってたよ』
『でも、結局はできなかったじゃないですか』
香乃は恨めしい気持ちでいっぱいだった。
『まあ、結婚離婚ってのは こちら側の言い分だけではどうしようもないことがある
からなあ。
あいつもお前に遊びだと 言うしかなかったんじゃないか』
香乃には 男側の気持ちはよくわからない。わかったのは、
自分だけではどうしようもできなかったということだけだった。
そして 綾瀬に 香乃と別れるにしてもなんにしても
きちんと誠意だけは見せろと伝えたらしいが
当の綾瀬からは なにも連絡がなく、まさに捨てられたとしか
思い様のない香乃であった。
香乃は、一度だけ綾瀬が酩酊状態でクラブ蝶に来て、
あの後、イタリアンレストランで待ち合わせしたとき
あのときが一番しあわせだったと思う。
当時、綾瀬はまだ課長でいたが中間管理職という立場で
いろいろあったのではないか。
自分がその支えになってあげたいと香乃はその頃既に思っていた。
店が終わって 息せき切ってレストランに入ったとき、
綾瀬は窓の外をぼんやりみていた。
『綾瀬さん ごめんね。待たせちゃった。』
『いや 少し酔いもさめてきたしちょうどいいよ。』
『お腹すいてない?』
『僕はもう要らない。ワインでも飲もうかな。君こそなにか食べたら?』
『じゃ、私もワインにする。』
香乃はいたずらっぽい笑いをうかべ、ボーイを呼び、赤ワインとブルーチーズを頼ん
だ。
綾瀬も香乃も酒に弱いほうではなく、ボトル2本あいてしまった。
気が付けば夜中の2時。
店もそろそろ閉店らしく、従業員が慌しく片付け始めている。
『もう出ようか』心なしか落ち着かなくなり、
綾瀬は 香乃を促した。
表に出ると思ったよりも銀座のイルミネーションが美しい。師走の風は冷たいが酔っ
た体には心地よい。
忘年会シーズンでもあり、まだ 中央通りのあちこちで、酔客で賑わっていた。
表通りにでて 車を拾おうとする綾瀬に、結構できあがってしまった香乃は酔って尋
ねた。
『綾瀬さんはどうして私を口説かないのですか?』
『だって 君は遠野さんと何か関係があるのかもと思ったし、僕には家庭があるし』
『だからあ 遠野さんは なんでもないって言ったじゃない』
『君を口説いてどうなるもんじゃないだろう』
と 綾瀬はこの辛み癖のある香乃を見つめていた。
『私、綾瀬さん 好きよ・・・』
好き!? 僕を!?
言いながら、香乃は ゆっくりと綾瀬の胸に顔を預けた。
もたれた香乃を綾瀬は戸惑いながらも、軽く引き寄せた。
香乃は 下から綾瀬を見つめる。もう二人には同じ考えしかなかった。
綾瀬は 香乃の顎をもち、そっと唇を重ねた。
どのくらい二人は抱き合っていたのか、数秒だったのか数分だったのか。
そっと香乃を離し、綾瀬は
『来週 25日あいてる?』と尋ねた。
『クリスマスね・・あけるわ。』
優しく微笑む香乃に安堵した。
そして 二人は手をつなぎ、無邪気な子供のように笑いながら
綾瀬はタクシーを拾い、香乃を送り届けて帰っていった。
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