止まらぬ妄想
僕は結婚して10年になる。
子供は2人いる。
妻とは社内恋愛で 結婚した。
僕が勤めている会社は一流企業で いわゆるエリートで しかも僕は課長だ。
おととし、東京の郊外に家を買った。
今のところ 安定して不平はないのに
なぜか 彼女に惹かれた。
彼女は 先週僕の働いている会社へ派遣社員として来た。
5人面接をしたのだけど 僕の好みで彼女だけを採用してしまった。
これは他の社員にはいえない。彼女を選んだのは
仕事ができるから という理由だったけど
本当の理由は僕の好みだからということなんだ。
彼女のそばに行くと どきどきする。
まるで少年みたいだと僕は思う。
彼女は若くはない。僕は彼女の年齢を知っているけど
見た目 30歳前半にしか見えない。遠くから見たら
20代後半にしか見えない。
しかし 話をすれば 僕と同じ世代だ。
家庭も仕事もそれなりに安泰だと 他に刺激を求めるのが
男なのかもしれないと最近思う。
とはいえ いくら彼女が気になったとしても
僕は結婚しているし、彼女は派遣社員だし
食事に行くわけにもいかず、普通に廊下で話すのもおかしいし
なにか理由をつけて 話しかけはするけど
でも 話が終わったらすべてストップだ。
こういった悶々とした毎日を送っていたある日
得意先の接待があった。
食事会はわが社がもったけど 話が盛り上がって
もう一件行きましょうということになった。
もう一件は 得意先が持つという。
僕は そのもう一件の店に行って
となりについた女の子見て驚いた。
彼女だと思った。
それくらい似ていた。心臓がどきどきした。
今までちょうどよいくらい酔っていたのに
酔いが醒めそうだった。
双子じゃないかと思うくらい似ていた。
話し方もそっくりだ。
でも その女の子は 僕を見て僕と話して
なんら驚いた様子はない。
初めましてと言って席に着き
いただきますといってビールを飲む。
そして僕の話を面白おかしく聞いて 笑っている。
店のマニュアルのように カラオケでもいかがですかと
歌の本を持ってくる。
僕は彼女が気になって気になって
歌どころではなかった。
ジャックダニエルの水割りを飲んで 結構気が大きくなってきて
初めて会ったというのに 僕は彼女に尋ねた。
『彼氏いるの?』
『いないですよ』彼女は笑って答えた。
『どこに住んでいるの?』
『石神井です』
『練馬か』『そうです。ここからはちょっと遠いのですが』
そういえば 会社のオオタカさんは 浦安だと言ってた。本人じゃないと
当たり前のことを当たり前に思ったのだけど
アルコールが前頭葉を侵食し始めて
当たり前のことがそうでないような気がしていた。
彼女の名前は ゆずと書いて柚子(ゆうこ)と言ったが、
店では ゆずと呼ばれているという。
とにかく 僕は彼女にオオタカさんの影が重なって
オオタカさんと恋愛ができないから 彼女を好きになってしまった。
男は勝手な生き物だ。
A子が駄目ならB子でもいい。いくら大好きなA子が振り向いてくれないなら
2番目に好きなB子がよくなる。
今日 2番目でも明日は1番になってしまう。そして付き合っているうちに
B子がベストになってしまう。
しかし 僕には妻と子供がいる。
今は 腕の中に柚子を抱きながら、勝手な僕は勝手に暴走してしまった。
3回 みんなに内緒で柚子がいる店に通った。
3回目 僕は彼女を店が終わってから すし屋に誘った。
なんだか 遊びなれたうちの部長みたいだけど
どうやってそういう店の女性をくどいていいかわからないから
部長の真似をするしかなかったのは 真実だ。
柚子だか オオタカさんだか時々区別がつかなくなるくらい
似ていた。本当はオオタカさんがこの店にアルバイトに来て
柚子だと名乗っているのじゃないかと妄想したりもした。
だから 会社にいて オオタカさんに用事があって
彼女と話すとき 僕は異常に興奮してしまうのだ。
オオタカさんと話すと 柚子とのえっちなことを想像してしまう。
オオタカさんの胸やおしりを さりげなく見る。
オオタカさんを後ろから抱きしめてみたいという妄想が膨らむ。
そんなことを考えると エンドレスだ。
仕方がないので トイレの個室に入って
僕のえっちな想像を一人で処理するしかない。
そうしないと 止まらないのだ。特にゆうべ柚子にあった日には
彼女との行為がすごすぎて それを引きずってしまうのだ。
本当は彼女と一緒に朝まで過ごしたいけど
妻にばれたら 柚子と恋愛することも駄目になってしまう。
朝までいて 朝ももう一度したいくらい柚子との恋愛は最高だけど
朝までいたら 会社に行きたくなくなってしまう。
とりあえず 朝の前に柚子と別れて 会社にいけば
オオタカさんがいる。
オオタカさんは 冷静だ。僕の指示を事務的に受け止める。
僕はオオタカさんと話すと どうも左の口があがってしまって
にやけそうな顔になるのが こわい。
結婚して他で恋愛しているなんて
口が裂けてもいえないけど、言って自慢したくなるときもある。
へえ 課長ってもてるんですねとか 言われてみたい。
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