堕落

3人でじゃんけんをした。
この裏には ラブホテルがあった。
話の流れで 先生 ラブホテルってどういうとこ?
と美緒が かまととぶって聞いた。

16歳の少女のその聞き方は少女ではなく
既にオンナだ。

沢村は ふざけて いや きっと気軽な気持ちで
『じゃ 先生と行ってみるか!』と言った。
沢村も男だ。お酒をのめば 酔っ払うし
いい気分にもなる。

そこで 3人が 
『いやだ~』といえば
その話はそれで終わったはずだ。

失恋で落ち込んでいた響子は
日本酒を飲んで かなりいい気分になっていた。
だから
『はい! 先生 私 入ってみたいです!』と
いつもより1オクターブあがった可愛い声で媚びた。

そののち 私も 私も と残りのふたりが挙手をしたので
沢村も返答に困り
『じゃ おまえら 3人でじゃんけんして勝ったのといくとするか』
それも沢村の冗談だった。
沢村は賭けた。
もし 響子が勝ったら ホテルに行こうと。
沢村は 響子に興味があった。
この女 16歳のわり なんでこんなマセタ視線をするのか
疑問をずっと持ち続けていたから。

勿論 他の二人が勝ったら
冗談にして その場をオワリにして
会計して 一人で2件目に行こうとは思っていた。

16歳の女子3人は嬌声をあげて
『じゃ 3回戦で』といった。

最初はグー
じゃんけん(間があく) ポン

美緒が2回勝ち、シオリも2回買った。
響子が1回勝ち、
これは 響子は無理だろうと思っていた矢先、
響子は立て続けに勝った。

最後のチョキを見て
響子は 沢村に酔ったチョキを差し出した。
そう 例の上目遣いで。
ちょっと首をかしげて。
『せんせ カッタワヨ』というカタカナで伝えたくなるような
猥褻さを残して。





高校2年夏休みが終わった9月最初の日曜に
響子は 同級生の牧野からフられた。

理由は 同じクラスに好きな女の子ができたから。
という 心変わりが頻繁におきる思春期ならでは
の回答であった。

夏休み 響子はアルバイトして
予備校に通って それで 牧野とは逢わずにいた。
響子の母は 継母で
通常の家庭ならば
ほしいものがあった ちょっと買って
しょうがないわねえ いいよ

という流れではあるけども

響子はどうも このお願い事が言えず
アルバイトして稼いで気兼ねなく
ものを買いたかったわけで

アルバイトを海辺の観光ホテルにした
と 夏休み前に 牧野に話したら

春休みのときみたいに
俺の近所の喫茶店でよかったじゃんか

と彼は言った。

確かに あの時は
バイトが終わって 彼のケータイにメールして
『バイトが終わった』と伝えれば
『5分で迎えに行く』という日課を
春休み中 ずっとしていたわけだから。

響子のバイトが終わって 彼女の家に帰る徒歩20分
自転車を使えば たかだか10分の距離であるのに
二人は 1分でも一緒にいたいがために
わざわざ 歩いた。

そして 響子の家の裏にある
森で 椿の木や、竹や、笹、杉など生えている森で
二人は 口づけを交わしていた。
それが日課のように。


だから 夏休みもそうすればよかったのに と
牧野は 夏休み中も思っていた。

響子に会えないから 同じクラスのオトコタチと会う。
オトコタチの彼女たちも合流する。
そのうち 彼女たちの友達も合流する。
その友達 史江(フミエ)に
彼は 心惹かれた。

響子は 同級であったけども
何かヒミツめいた雰囲気を持っており
本人が気付かないだけで
男を騙しそうで その純粋な瞳を向けられたら
つい キスをしてしまいたくなる唇をもち

肌は 透き通るように白く
特に目の下が その白さに調和して
皮膚が薄く 青ざめていた。

唇から首にかけての静脈でさえも
色香があった。
勿論 本人は気付かなかったけども。

牧野の同級生たちは
『藤野響子は もう男とやっているよ 中学のときから』
と 冷やかしていたけども
実際 響子はだれもやっていなく まだバージンであった。

突然 牧野から言われた『別れ』は
響子にとってマッタク免疫がなく
彼女は 失意のどん底、地獄の果て
を さまよっているがごとく

その夜 ふらりと繁華街へ出かけた。
友人 美緒とシオリと連れ立って。





『なんだ おまえら』と
後ろから 方をたたく男がいた。
予備校で英語を教えている 沢村であった。

『やだ 先生こそ』と
女子も3人集まれば 成熟した女性のごとく
シナをつくって 流し目で男教師を見る。

立ち話を15分くらいしたところで
沢村は 気軽に
ちょっとメシでも食いに行かないか?
と3人を誘った。


沢村は 33歳、独身、長身、メガネをかけたインテリタイプで
普通の女子は 沢村を好きだというだろう。
響子は そんな沢村を別になんとも思っておらず
かえって 『自分はもててると思っているカンチガイやろー』と
心の中で  侮蔑してた。

しかし 美緒とシオリは素直に喜び
予備校外で 先生と食事なんて
ちょーうれしーというはしゃぐので

まさか 自分だけ帰ります
ともいえず 美緒 沢村 シオリと3人で連れ立つ後ろから
自分だけは世界が違いますとばかり
とぼとぼと 着いていった。

沢村は 路地に入り
暖簾をくぐり がらがらと引き戸を右にひき
180cmの長身を猫背気味にして
『よお』と店に入っていった。
明らかに 
ここは 響子たちが今まではいったことのない店である。

道路には打ち水、戸の両側には
塩が盛ってあった。
引き戸の前に看板が出ていた。
『小料理 小夏』

3人は目をしばたかせ
小料理屋って よくみかけるけど
実際はどんな感じなんだろう。

響子は さっきまで
ふたりに失恋を痛手を話し
実は これから 3人で一人っ子の美緒の家にいき
父が出張、母が会合とかで 誰もいない
特に今夜は 邪魔がいないところで

お酒でも飲んじゃおう!と
漠然と取り決めていただけに
小料理やで 先生のおごり(推測)で
だったら ちょっとくらい飲んでもいいよね と
目配せした。

初めて入る『小料理屋 小夏』は新鮮だった。
まだ16歳の高校2年生だから。
居酒屋もクラブも 夏休みに経験した。

しかし 『小料理屋』とは!?

先生は 好きなものを注文して良いよ といった。


そんなことを反芻しながら
響子は 沢村とラブホテルに向かっていた。
無言だ。響子は何も話さない。
沢村も話さない。
響子はバージンであったが
牧野と それなりのペッティングの経験はあった。

夕暮れの街を見下ろし そろそろ帰る時間だねと
牧野に諭され、部屋の電気を消す。
薄暗くなった部屋で 牧野は響子を抱きしめる。
ちょっと上をむけば 牧野の唇。
響子は その唇を合わせた。

いつから舌を使うことに抵抗がなくなったのか。
いつからそれが気持ちいいということに気付いたのか。
いつから その舌が 彼女の首すじをたどり
耳を舐め、鎖骨を通って

彼の冷たい手が 彼女のシャツのボタンを上から
一個ずつあけて
第4ボタンあたりまでくると
その冷たい細い指で
そぉっと まるで 誰もいない家に足音をたてずに
忍び込む盗人のように
優しく その指は 響子の胸を触る。つかむ。
揉む。

中心にあるまぁるい突起物を触る。つまむ。
ころがす。

ため息が出る。

なんでこんなに気持ちよくなったのかしら。
響子は 牧野の背中越しに彼の部屋の壁掛け時計を眺める。
ああ もう 早く帰らないとまた 母に怒られる
と 思いながら
この行為は やめることができない。

牧野は 響子のため息で満たされ
さらにボタンをはずす。
5つ 6つ 7つ
全部はずして 彼女の胸を改めてセメる。

ああ それからそれから

彼女が首をふり いやいやをしても
それが 彼女の『快楽』であることを知っている。

だからやめない。そのまま進む。
さらにその指は 響子の足の間に進む。
性器さえ挿入せずにいたものの
二人は既に そういう関係だった。

響子は沢村とホテルに入っても
どうということもなかった。
単に私は処女膜がついているだけのからだで
単に男性器を挿入してないだけの女なのだと
認識してから。


無言でホテルに入って
無言で部屋を選び
無言でエレベーターにのり
無言で鍵を回し ドアをあけ
パタンを閉める。

それから 鍵をかけたのは 響子であったが。

その行為を盗み見して
沢村は勃起した。

セイテハコトヲシソンジル

沢村は優しく響子を抱いた。背後から。

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二人の構図

僕と光(ヒカル)は 所謂 二卵性双生児だ。

確か 僕たちは10才頃まで 同じ部屋だったと思う。
冬が終わった暖かいある日 
母が 光の洋服やベッドを別の部屋に移して
僕に言った。

『晶(アキラ)、今日から光とは別の部屋ね』

僕は何か、からだの一部分を持っていかれた気がした。
それまで 光とは 学校で何かあったり悲しいことがあると
一緒のベッドで抱き合って寝ていた。

ヒカルも僕も あまりおしゃべりなほうではなくて
でも お互いの気持ちが通じ合うというか
悲しいことがあると その時は何かあった? 
と、お互いに分かり合えた。

だから 彼女が僕のベッドに そうっと忍び込んでくるとき
僕は何も言わずに 彼女を抱きしめた。
それは まるで 子猫を抱いている感じで
彼女の不安を取り除いてあげたい という気持ちだけだった。

僕たちは生まれたときから 一緒の部屋だったし
幼稚園のときも 寒いときは一緒に寝ていたから
別に 子供の頃 抱き合っていたとしても
何の不思議もなかった。

そして 僕たちは時々 くちづけもした。といっても 子供がするのだから
単に唇と唇を合わせるだけの他愛も無いものではあるけども。

『ねえ あきら・・ 私たち おかあさんのお腹の中でもこうしていたのかな』
僕はそんな光の感性が好きだ。

部屋が別になったのは 多分小学校4年頃で
その頃 ヒカルは 絵画部に入った。
僕は パソコン教室。

学校の授業が終わると お互いにクラブ活動になって
部屋も違うこともあって
話すことも少なくなっていった。

中学の入学式のとき
男と女の双子が珍しいのだろう、多くの人が僕たちに関心があるようで
それと同時に 多くの同級生から話しかけられて
また 同時に多くの友達ができた。

勿論、僕とヒカルは同じクラスでも同じクラブでもなかった。
ヒカルはあいかわず 美術部で絵を描いたし
僕は僕でPCクラブに入った。

はっきりいって、双子だからモテルというのはある。
ヒカルは 上級生の男子から注目されていた。
僕の先輩から 『高橋って ふたごなんだって?妹がいるんだって?』と
よく聴かれた。

だから PCクラブに限らず、ヒカルがはいっていた美術部の先輩だって
同級生だって 彼女と仲良くしたがっていたに違いない。

僕たちが中学2年になった時、
ヒカルの絵が なんとかという部門で入選したと
母が言っていた。

僕は絵のことは あまりよくわからなかったので
『そう』といい、ヒカルと時々 顔を合わせたとき
『入選したんだって?おめでとう』と言ったら
彼女ははにかんで 笑って 『ありがとう』と言った。
やはり 彼女はあまり話さない。
その代わり 彼女独特の視線の使い方が
この頃から かなり官能めいたものに僕は気づいていた。

僕たちは思春期になり
以前よりもますます 話をしなくなり
お互いの部屋にいる時間が長くなっていった。

ヒカルは絵が入選したことで
美術部の顧問の先生から 本格的に絵を習わないかと
言われたそうで(こういうニュースはすべて母から僕に流れてくる)
どうせ習うなら 美大はいるくらいのがいいわね
と母は 父に相談していた。

そして ヒカルは本格的に絵を習うことになり
彼女の部屋は アトリエと化していった。

僕は学校で 学校のホームページを作っていた。
将来 僕はパソコンを使った仕事がしたいと漠然と思っていたので
同級生の女子から『おたく』などと 影で言われていただろうけど
そんなこと気にしなかった。

ヒカルの絵が またなんとかというので 賞を取ったとかいうと
僕たちPCクラブでは ホームページにでかでかと
『高橋 光さん(2年3組)○○展○○賞受賞』というのも作っていた。

14歳になった光は ノーブルで深い印象づいた顔に変わってきた。
色は透けるように白く 一日アトリエにこもっているので
蒼くさえみえた。
僕はそんな光に ときめいてしまった。

兄の僕でさえときめくのだから、他人の男はもっとそうなのだろう。
僕は 光に
『つきあってほしいとかって 言われたことないの?』と
廊下ですれ違うときに たずねたら
『言われたことはあるけど・・・』と彼女は僕をまっすぐにみて
その大きな瞳を伏せ、俯いた。

『言われたことはあるけど、タイプじゃない人からだからいつも断るの』
と光は言った。
『私 絵を描いているときが一番幸せなの』
光は そういいながら またアトリエに入ってしまった。

僕も光も学校の成績はよい方で
いつも学年で20番から50番以内に入っていたので
中学3年になったとき 進路も好きな高校に進学できた。

僕は普通高校の共学に進み
光は 私立の女子高に進んだ。
相変わらず 彼女は絵を選んでいた。

高校一年の夏に 光とふたりだけになった夜があった。
両親が 葬式で九州に行ったから。
本当は僕たちのひいおばあちゃんがなくなったのだから
僕たちも出席したほうがよかったのだろうけど
僕たちは期末考査の真っ最中で留守番をすることになった。

2日目の考査が終わった後
光が僕の部屋をノックした。
『あき、入ってもいい?』
僕は ドアノブに手をかけ 内側からあけた。
『なにしてたの?』

『ネットサーフィン』
『あきは ネットが好きなのね。好きな女の子とかいないの?』
『・・・』
好きな女の子ねえ。クラスに可愛い子は2,3人いるけど
告白しようという気持ちまでには 至らなかった。

だから 僕は沈黙した。

『あのね、』
光が 言葉を選ぶように ゆっくりと下を向いて
次のあのね で 僕の目をみた。
こういうところは 昔から変わってない。
何かあったんだな と直感した。

しかし 光は いつも『あのね』から 発展しない。
こういう性格だから 絵がすばらしいんだろうな。
と 僕は光の蒼い顔とまっすぐな髪を見ながら思った。

『なあに』僕は優しく答えた。
光は ゆっくりと近づいてきて
『あき、抱きしめて』と言った。

僕は 彼女を優しく抱きしめた。
まるで 10歳までそうしてたように
そのときの記憶が僕の脳を占めた。
そして また ゆっくりと彼女の髪を撫でて
光を 見つめなおした。

『わたし・・・』
光の目に涙が浮かんだ。
『わたし・・』
暫く 沈黙があり 暫く光は泣いていた。

いやなら話さなくていいじゃないか。
僕はそういった。
でも つらいのよ。
俯いた光は 僕のベッドのふちに腰掛けた。

そのような光には 昔から慣れていたので
僕は僕で 彼女に背中を向けて
パソコンでゲームを作っていた。
ゲームつくりは面白い。
自分の想定したストーリーが展開されていく。

光が突然僕の背中にしがみついた。
『あき・・ 私 男の人に抱かれてしまった・・』

僕の脳みそに稲妻が走った。雷鳴がとどろき
どしゃぶりの中に放り出されたような気分だった。
いつかは 光が他の男とそうなるだろうと予期してはいたものの
こんなに早く 光が女になってしまうなんて。
というような驚き。

僕はとっさに振り向いて 彼女の肩を強く抑えてしまった。
『なんでそんなこと僕に言うの。』とつぶやいた。

『光、好きな男だったらいいよ、光が幸せならいいよ。』
『あき、私 もう男の人はいやだ』
そうやって 彼女は泣きじゃくり、『無理やりだったの・・』
と僕の胸に顔をうずめた。

『好きな人だったけど 乱暴にされて体に傷ができたわ』
光は言った。
僕が驚くくらい このときの光は饒舌だった。
『私 小さい頃 あきに抱かれたように優しくされたかった』
『あき ねえ 私をまた同じベッドで抱きしめて』
『無理だよ、光。僕だって 気持ちを持った男だし。』
『もう 僕ら 子供じゃないんだ』
『わかっているわ そんなこと・・・ 私気づいたの』
そして 光は僕の目をまっすぐにみて
覚悟してきたように
『私 あきじゃないとだめってことに気づいたのよ』

僕は 夢中で光を抱きしめていた。
まだ16歳の僕に冷静になれというほうがおかしい。
僕たちは 何年かぶりにキスをした。
それは 子供時代のようなものでなく
離れがたく やめられず 甘美な誘惑の中だった。

心を決めて 光は僕のベルトに手をかけた。
『光、男と寝たのは 一回じゃないだろう』
『あき そんなこと言うのはやめて。私はあなたを感じたいの』
そういいながら 光は僕のベルトを緩め
僕が恍惚を感じている最中に 下着だけにしてしまった。

僕は 光が妹だということをすっかり忘れた。
光のまっすぐな髪が好きだ。
光の深い黒い瞳が好きだ。
光のちょっととがった鼻もまあるい唇も
すべすべした蒼い肌も
形のいい耳も
華奢な鎖骨も
まだ硬くて 小さな乳房も 
僕が 乳首を含んだときに漏らす吐息も。

体中が熱くなりながら 光とのことは一切覚えておこうと
思ったけど とろとろのはちみつの中にいるようだ と
感じた瞬間から そんな冷静なことができなくなり
途中 光の手を借りながら
僕は明らかに 光の中で 果てた。

この夜から 僕たちは今までの関係をすっかり変えてしまった。
僕たちが高校生になったのを機に 母はパートに出たし
父は父で 管理職になり残業が多く
家に戻るのは ほとんど終電間際であった。

僕たちは必然的に二人きりになる。
母は 光と僕に交代で夕ご飯を作るように指示したけど
まるで 新婚生活のような僕らは
一緒に夕飯を作り 一緒にお風呂に入り
一緒に光の部屋で 彼女の書いた絵を眺めたり
彼女が書きかけの絵に批評をしたり
また 光は僕の部屋のベッドで僕の愛を確かめたがったり
僕らの奔放な愛は暫く続いた。

何回か関係を重ねるうちに光の体は変わっていった。
本で読んだ限りでは
(僕は光以外の女性とは経験がなかったのでわからなかったけど)
10代ではセックス中のエクスタシーは難しいらしい。

それを光に話したら
『あきとは 昔から同じベッドで寝ていたし、遠慮がないから心配がないの』
と答えた。
そんな光がさらに愛おしくなって 僕は光に溺れた。

官能小説が学校で流行っていると 光が妖しい本を持ってきた。
『女子高って変わってるね』というと
『男子がいない分 ちょっと変よ』
僕が 光に『この部分 読んでみて』といたずらっぽくいったら
光が ちょっと頬を染め
僕は目を閉じて 聞いていた。

『光、そういうことされてみたいの?』
光は俯いた。

この頃 僕たちはお互いがお互いのおもちゃであった。
携帯メールで 今日は何時に帰る?と確認しあい
母のパート時間を気にしながら むさぼりあった。

それがいけないことだとわかっていても
この頃の僕たちには それをとめる理由が見つからなかったし
だからといって、見つけようとも認めようとも思わなかった。

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男の気持ち

冬の寒い日 将太君は一匹の子猫を学校の帰りに路地裏で見つけました。
その子猫は白く黒と茶色と黄色の三毛猫でした。耳の色が茶色でとてもおしゃれで
可愛かったので、将太君は思わず傍に駆け寄りました。
しかし 子猫は驚いてすぐに逃げてしまいました。

次の日 また路地裏で三毛猫を見つけました。
今度は友達の洋介君も一緒です。
将太君は この三毛猫がとても好きになったので
遠くから洋介君にも紹介しました。

僕 あの猫 一度触ってみたいのだけど すぐに逃げてしまうんだ。
将太君は残念そうに言いました。
洋介君は
だったら えさをあげてみたらいいよ。
と 提案してくれました。
えさってどういうえさがいいのかな。
猫のえさって売ってるじゃないか。あれでどうかな。

洋介君に教えてもらって
将太君は ペットショップに行きました。
でも 自分のおこづかいでは買うことができません。
そこで 将太君はおかあさんにお金をもらうことにしました。
しかし お母さんはそんな簡単にお金をくれません。仕方ないので
参考書を買うからと 将太君は言いました。
おかあさんは ちゃんと勉強するのよと1000円くれました。
将太君はペットショップに行ってすぐに猫のえさを買いました。

翌日 将太君は先生に見つからないように猫のえさを鞄にいれて
学校に行き、洋介君にえさを持ってきたことを伝えました。
二人は 学校の帰りにまた路地裏に行き その子猫がこちらを見たので
そっとえさを置いてみました。

子猫は おびえながら近づき ちょっと食べてみました。
おいしいとみえて まだ食べています。
将太君は 今度は少しずつ近づいて 自分の手にえさを乗せてみました。
洋介君がそうしてみたらと言ったからです。

子猫は最初 矢張り様子を見ていましたが
結局 怖いとみえて すぐに去ってしまいました。
がっかりした将太君に洋介君は言いました。
子猫って そんなに簡単になつかないよと 慰めてくれました。
じゃ 明日もまた来ようと 将太君は決めました。

3回くらい同じように接してから 子猫はなつきました。
子猫がなついたので 将太君はその子猫に『みい』と名づけました。
小さい声で みい と鳴くのでとても可愛いのです。
なついたので 今度はそっと抱いて見ました。
みいは 小さい円らな瞳で 将太君を見上げました。
将太くんはあまりの可愛さに ぎゅっと抱きしめていました。

本当は家に連れて帰って一緒に寝たいな。
将太君は思いました。

ちょっとお母さんに聞いてみました。
ねえ お母さん うち猫飼ってはいけないの?
あたりまえでしょう。いったい 誰がお世話をするの?
僕 猫飼いたいなあ。
将太君の夢は大きく膨らみました。

学校の帰りに毎日毎日 みいに餌をあげて みいを抱きました。
勉強よりもみいが可愛くて仕方ありません。
いつもなら 塾にも行かなくてはならないのですが
みいと一緒に遊んで 塾のことも忘れてしまいました。

ある日 お母さんが
将太 昨日 塾の先生から電話がかかってきたけどどうして行かなかったの?
将太君のお母さんはとても勉強に熱心な人だったので
本当のことが言えません。
だってさ 洋介君と遊んでいて忘れちゃったんだよ。
と つい洋介君のせいにしてしまいました。
お母さんは ちゃんと土曜日は行くのよといいました。
将太君は 月曜と水曜と土曜は塾に行っています。
今までは 何も楽しいことがなかったから とりあえず 行っていましたが
みいと遊ぶようになってからは 勉強するよりも
みいを抱っこしたり ほおづえしたり
猫じゃらしで遊んだり そっちのほうが楽しいのです。

そして 将太君は 土曜日も塾を休んでしまいました。
将太 今日も塾いかなかったの?
とお母さんは怖い顔で言いました。
お母さんがあまりに怖いので さすがに今日は洋介君ととはいえません。
しかも お母さんは
今日は 矢島洋介君のお母さんにも聞いたの。
あなた 学校の帰りに猫と遊んでいるんだって?
と 尋ねました。

仕方なく うん というと
お母さんは もう猫と遊ぶのはやめて
ちゃんと塾に行ってちょうだいと 厳しく言うので
将太君は しぶしぶ はい と小さい声で言いました。

そうは言っても みいを見かけると
どうしても 抱っこしたくなります。
鞄に餌をいれておいて 手に乗せれば
みい と鳴きながら 食べます。
可愛いな 可愛いな と将太君は思います。

みいを抱っこして その可愛いまあるい大きな目をみて
毛並みのいい小さい体を抱いて やっぱりみいを捨てるなんてできないと思います。
お母さんに怒られるので 塾はサボらないことにしました。
そうなると みいと触れる機会が少なくなるのは仕方がありませんが
もうあえなくなるよりいいと思いました。

月曜の夜 お母さんが
将太 まだ 猫と遊んでいるの?と尋ねました。
ううん もう遊んでないよと言うと
おかあさんは また怖い顔をして
ウソおっしゃい。猫の毛がトレーナーについてたわよ。
と 言いました。
将太君は お母さんを騙すことは難しいなと思いました。

とはいっても学校の帰りにみいを見かければ 
どうしても傍に行ってしまいます。
僕は みいと離れることなんて出来ないよと
将太君は思いました。
しかし お母さんは怖い。お母さんは将太君の洋服を
お洗濯のたびにチェックしました。

そのうち 将太のおこずかい これから少し減らすわねといいました。
おかあさんは 将太君が少ないおこづかいで
猫にえさを買ってあげるのを知っていました。
将太君は学校の帰りもお母さんに見張られているのじゃないかと思って
ついに みいを見かけても 知らんふりをすることに決めました。

そういう日が続いた翌年の秋
将太君は 学校の帰りに みいを見かけました。
それは お金持ちのおばさんに抱かれている 白い三毛猫。
耳が茶色で みい と 鳴いていました。
僕は もう みいを抱けないんだなと
昔を思ってとても切なくなりました。
(おしまい)

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アプローチ

私が ねえ と 彼に目配せをする。
彼は 私の横顔をすっと見るだけ。
もう わかっているでしょうと 私は目で訴える。
しかし彼は 私が何を求めているか知らない素振りをする。

私は焦れて 彼の唇にキスをする。
彼は舌を絡ませる。
漸く 私は彼に気持ちを伝わったことを確認する。

私は彼の肩を強く引き寄せる。
彼は私の重力に負かされて
私を押し倒す。
私は彼の肩を更に強く抱く。

彼は 私にキスを止めない。
そして 私が次にリクエストをするのを待っている。
私が唇を離す。首を右に向けて吐息を吐く。

ああ・・

彼は 私の首筋をなめて そのまま下降する。
君の乳首触ってあげようか。
と 彼が私の耳元で囁くと
それだけで 私は興奮して
まだ 彼が私のそこを触ってもいないのに
既に反応する。


駄目よ。。。

そんなことは わかっている言い訳。
駄目といわれて彼が容赦する筈もない。

最初は ゆっくり。そして リズムをつけながら。
彼は私の右の乳首を触る。指で。舌で。舐めて。
はさんで。下から上に。繊細に。優雅に。

私が感じるのを十分上から見極めてから
更に 今度は 左も触ってあげようかと 提案する。
そんなこといわれなくても 私は十分なのに
彼の気持ちは 決まっている。

もう駄目。本当に駄目よ。

本当に駄目なの? 何がどういう風に駄目なの?
と聞かれても 私の脳は限界を超えている。

両方の乳首を触られて 弄ばれて いじられて
私は 空をみながら 喘ぐ。
その声は泡となり かなたに消えて行くも。

彼の制裁はまだ終わらない。
次は 私の大事な場所に。
ゆっくりと彼の指が降りてきて。
下着の上から触る。いや。もう駄目。
そんなことしないで。
と 要求しても
彼は それじゃ もうこれでやめてもいい?と
意地悪く質問する。

今まで慣れ親しんだ会話を何回も交わしているのに
私たちは この問答を楽しんでいる。

そう 私の反応を確かめ
指で何度も往復し、下から攻めて
私の体が痙攣するのを見届けてから
彼はそこにキスをする。

いや ただのキスではなくて。
それは彼の唇に挟まれ、吸われ、時々噛まれる。
痛さで声を出しても 彼には届かない。
まるで 私は刑を執行されている罪人となる。

果たして本当に私は罪人なのか。
この果てしない欲望の悦楽の底にいる私が?

そう浮遊している間に彼は 私が一度達するのを見届けてから
漸く 彼のものを私に挿入する。
ああ やっと。。。 そう やっと。。。

と 思いつつも
彼は私を許してはくれない。
終わらない波に踊らされて 私は数え切れない快楽を味わう。
死んでしまそうな感覚の中 彼の攻めから開放されて
私は 波に打ち寄せられた感覚で 暫く呆然と横たわっている。

それにも関わらず 彼は 今度は後ろから。
私の腰を持ち上げて 深く深く挿入する。
体がしなる。私の目はもう何もみていない。
彼の部屋の天井も 梁も見えるのに
それは 私の記憶には残っていない。

このからだの深さはなんだろう。
あとからあとから 押し寄せる渦のような感覚。
もう止められない。
彼の腰を後ろから押さえながら
右足をあげたまま 更なる深みに嵌る。
それは 奈落の底。

今まで何度もいってはもどりつする
抜けられない 秘密の場所。

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表も裏

僕の隣でカオルは眠っている。
彼女の寝顔をみて 僕は彼女とであった時のことを思い出した。

共通の友達を介して彼女とは知り合った。
合コンとかそういうのじゃなくて
僕の友達にバレエの先生がいて
彼女が ちょっと私の友達の発表会につきあわない?と誘ったからだ。
バレエなんて 僕の柄じゃないけど
暇だったので 行ってみた。

そこにカオルがいた。
彼女のバレエをみて 胸がときめいた。
踊りをみて ときめくなんて初めてだった。

発表会が終わって 僕の友達 彼女は玲子というのだけど
玲子が カオルの楽屋に行かない?というので
また僕は付き合うことにした。

舞台裏の白い廊下を歩く。
無機質なハイヒールと僕の靴音。
玲子はそれほど口数の多い女性でもないので
にこにこしながら 僕に 『良君 バレエよかった?』と
何気にたずねた。
『まあ よくわからないけど・・・でも 
あのカオルさんだっけ。パンフレットに書いてあったけど。彼女のダンスはよかったなあ』
『カオルって 自分の内面を映し出すのが上手いのよね。私も見習いたいくらいよ。
だから 女性も男性もファンが多いのよ』

西川カオル様
と書いた楽屋に 玲子は コンコンとドアを叩く。
はい どうぞ
と 乾いた声で返事があった。

少し重いドアを開けると カオルが 化粧を落としてるところだった。
片手にティッシュを巻いて こちらを振り向く。
『あ 玲子か。今日 どうもありがとう。あれ こちらの方は?』
カオルは半分油が残っててかてかしている顔で僕の顔をみた。

『私の友達で 高野良介君です。』
なんだか玲子がきちんと紹介してくれたので 僕は面食らって
おもわず 『どうも・・』と愛想のない返事をしてしまった。

『ちょっと待って 玲子。もうすぐ終わるから。終わったらさ、この裏のイタリアンでご飯食べない?』
結構 カオルさんってさばさばしてるんだなあと僕は会話の端々で思った。
彼女のダンスが 妙に妖艶でしっとりしているのでもっと色っぽい人かと想像していたのだけど。

玲子も玲子で 僕の予定など聞かずに
『いいよ。久しぶりにイタリアンいいね。』
『踊った後はさあ、のども渇くし ご飯の前に軽くいっぱいってところだよね』と
カオルさんは ウインクして僕にも笑いかけた。

玲子が 良もどう?と誘ってくれたので
僕はカオルさんと話がしたかったし彼女に興味があったので
即座に え 僕もいいの?というすっとぼけた顔をして
『??マーク』の顔を見せたら

玲子が 何 とぼけてんのよ と笑いながら
良も行くから って 大笑いしてた。
っていうか そんな笑うなよ。尤も 僕と玲子の間には男と女の感情なんてなくて
彼女の別れた彼と僕が友達だってことだけだ。

新宿歌舞伎町のはずれにある 妙に小さな店のイタリアンに招待されて
僕と玲子とカオルさんで 最初はビールで 後はワインを飲んだ。
玲子とは 結構飲んでいたけど カオルさんがこんなに飲めるなんて
僕はまた驚いた。
だって 彼女は一見して上品そうでおしとやかそうで
そんなよっぱらって げらげら笑うタイプにはどうしても僕は思えなくて。
その 僕が一目見て気に入ってしまった カオルさんが
今度は 男言葉で僕に話しかけたときには非常に腰を抜かしそうになった。

『良君ってさあ 仕事何やってんの?』
『カオル もう飲みすぎじゃないの?』
『なんかさ 舞台の後って すっげえ疲れて なんかすっげえ飲みてえって感じじゃね?』
って 玲子に絡んでくる。
そうこう飲んで食べているうちに終電の時間になって
玲子が 『私 もう帰らなくちゃ』って腕時計をみて唸っていた。
玲子は 中野に住んでいるから 新宿からすぐなのだけど

『カオル もう帰るでしょう?』
『私 まだ帰りたくなーい』
『そんなまた酔っ払ったこと言ってないで もう帰るのよ』
『カオルさん 家どこなんですか?』と僕は二人の間に入る。
『私の家は 吉祥寺なのよ』
なに~~~!? 僕の家も吉祥寺だ!
吉祥寺といっても 僕は三鷹よりではあるけど。。。
『とりあえず ここはもう終わりにしようよ』と玲子がカオルさんに言っている。
カオルさんは はっきりいって酒癖があまりよくないようだ。
僕は彼女の舞台と本当の彼女のギャップに非常に驚いていた。
玲子は どうもカオルさんの酔っ払いにはなれているようで
『じゃ カオル とりあえず ここはここで終わりにして・・・』という。
『明日の予定はどうだっけ?』と突然手帳を出して 明日をチェックするカオルさん。
僕は彼女を観察して 突然口が悪くなったりするので
おかしいやら 可愛いやら。
『やべえ 明日さあ 12時からレッスンだった』
『ほら カオル もう飲んでいる場合じゃないんだから』
と 年齢的には玲子の方が下なのに完全にカオルさんはいかれている。
僕は カオルさんがどこまで記憶があるのか 本当に不思議で
二人の行動を眺めていた。

突然 玲子の携帯が鳴った。
『あ ごめん、彼氏から ちょっとごめんね』といって
カオルさんの側を離れた。
カオルさんが 僕に顔を向けて
『良君 私のこと興味ある?』とたずねた。
僕はあまり酔ってなかったので とても驚いて
(僕は酔ってそういう風に人に尋ねるということが不可解であり)
『ええ まあ・・』と曖昧に答えたら
カオルさんは 『あまり興味なさそうねえ』とあちらの方を向くので
ああ これは 僕はいいチャンスを逃すかもしれないという男特有の勘が働き
『いえ 僕 カオルさんの今日のダンスみて とても興奮したんです!』と一気に
言ってしまった。自分の中で ああ やばい 言い過ぎかもと思ったのだけど
カオルさんはちょっとだらけた感じで
『ふうん 私のダンスのどこがよかったってわけ?』とたずねた。
僕は正直に『妖艶でしっとりして引き込まれそうになりました』って言った。
彼女は『ありがとう』といいながら テーブルにうつぶせに寝そうになった。
玲子が帰ってきた。
『こら カオル もう帰るよ』と言って
カオルさんを起こそうとして
なんだか僕はカオルさんが痛々しくなって
玲子に 『僕 カオルさんを吉祥寺までタクシーで送って帰るよ』と
馬鹿な答えをしてしまった。
玲子は 『結構かかるよ』と笑ったけど
僕にしてみれば 舞台でみたカオルさんのダンスが頭から離れなくて
一分一秒でもいいから もっと一緒にいたいと思っていたから
このチャンスを逃したくなかった。
だって 今日が終わったらまたカオルさんと会えるチャンスなんてそうそう
転がってなそうだもの。

玲子は彼氏の部屋にこれから行くというので
僕はカオルさんを連れて 靖国通りでタクシーを拾った。
『じゃ 良君 カオル頼むわね』
『わかった』
玲子はまさか 僕とカオルさんがこの日のうちに関係を持つなんて
ゆめゆめ思っていなかっただろう。このときは。

タクシーを拾って
『吉祥寺までお願いします』と僕は告げた。
カオルさんは 僕の目からみたらそれほど酔っているようには見えなかったのだけど。
車に揺られて彼女は寝てしまった。カオルさんの頭が僕の肩に寄りかかってくる。
いや 彼女は無防備すぎる。
もし ここで僕が彼女にキスしても彼女はわからないだろう。
しかし 彼女はセクシーだ。あのダンスをみて 彼女はどんなセックスをするのだろうと
思い描く男は多いと思う。
そんなえっちなことをつらつら思いながら タクシーは吉祥寺に着いた。
僕は『ありがとうございます』といいながら お金を払って
カオルさんに『つきましたよ』と告げると
彼女は 長い髪をかきあげてけだるそうに
『ああ ありがとう』といいながら だらしなさそうに
タクシーから降りた。

吉祥寺の懐かしい風が吹いた。僕は 新宿と違って このやわらかい風を感じると
ああ 吉祥寺の戻ったなあと思うのだ。
『ねえ 良君』とカオルさんが僕に尋ねた。僕はもうここで彼女と別れるだろうと思っていたから
軽い気持ちで彼女を横目で見た。
『これから忙しいの?』という。
忙しいっていう意味がよくわからないので 僕は黙っていたのだけど
『嫌じゃなかったら これから ホテルいかない?』

はあ!?
僕的には非常に驚き 非常に世間がひっくり返ったような。
だって あの美しいカオルさんが。
あの妖艶なダンスをするカオルさんが。
僕のほかにもファンが沢山いるだろうと思われるカオルさんが
自ら 僕を誘うなんて。

僕はその提案にくらくらしてしまった。
その気持ちを見透かすように カオルさんは
そそくさと 吉祥寺のラブホテル街に歩みを決めていた。

僕もカオルさんもアルコールが多少ハイっていたとはいえ
(いや カオルさんは多少じゃなかったけど)
しかし いやまじで 彼女の反応がよすぎて。
というよりも 僕の女性経験が少なかったのだろうか。
と終わったあと つらつら考えながら また彼女を腕枕していた。

彼女の反応はといえば
キスしながら 既に感じで喘ぐ。そして 僕が彼女の腕を軽く愛撫しても彼女は感じる。
太ももにキスしても 胸にキスしても それは全てが同じでなく
全て違う反応で僕に目配せをして もっともっとと無言で要求する。
彼女は 感じるというよりも モラスというか 感じたくないのに感じてしまうという
それは彼女のダンスに通じるものがあって
僕は非常にそそられて 彼女とセックスしているということもそうだけど
彼女の全部を僕のものにしたい という欲望を
初めて僕の心に植えつけてしまった危険な女だ。カオルというひとは。

彼女とセックスして 他の女性と感じたことのない後味があった。
そう 彼女は またセックスしたくなる女だ。
僕は彼女のことを考えるたびに勃起する。それが電車の中だろうと
会社のミーティングだろうと 彼女を思い出すたびに僕は勃起する。
これはかなりヤバイ症状だ。
彼女と会う以外にこの症状は改善されない。
兎に角 彼女のことを考えるたびにセックスしたくなるというのは
ある種の中毒だ。

僕は覚せい剤など打ったことないけど
もし そういう状況になったら きっとお金をいくら払ってもいいくらい
彼女とセックスしたいという気分になるくらい カオルとのセックスは凄い。

僕たちは溺れた。セックスに。二人で。
カオルに僕が『君とのセックスがすごくて忘れられない』とメールしたら
カオルから即座に『私もよ あなたのxxxが忘れられないの』と
僕は非常に興奮することを彼女を平気で送ってくる。
『じゃあ 僕のxxxで君を蕩かそうか』といえば
『私はあなたの奴隷 どうにでもして・・』と返事が来る。
こんなメールを昼日中から交わしていたら 
そりゃもう仕事どころじゃない。
一刻も早く 仕事を終わらせて やばいカオルと会おうと思う。

ある日 僕は気取ってフレンチを予約した。
『カオルさん(このときはまだカオルと呼べなかった)フレンチいかがですか?』
『いいわね。私 フレンチ好きよ』といいながら シャンパンを飲み
僕はちょっとアルコールがきいたので
『本当は すぐにあなたを抱きたかったのですけど』と本音を言ったら
『だったら このあと すぐに行きましょう』とカオルさんは僕に右から流し目を使って
誘惑した。

結局僕たちはセックスに溺れた。いかに素敵にフレンチや イタリアンや 日本食を予約しても
更なる目標はセックスである。決してディナーなどではないのである。

カオルさんが
『ねえ 良君 私 別にホテルで毎回会おうって思っているんじゃないわよ』と 
僕の肩越しに言った。
『私 あなたが好きよ。あなたの部屋で過ごしてもいいのよ。こうホテルばかりつかうんじゃお金がかかるでしょう?』
僕に優しいまなざしで言う。
なぜか 僕はカオルに他の男の気配も感じていた。こんないい女に僕以外の男がいて当たり前じゃないかなという
妄想。

そんな僕の嫌な邪念を吹き飛ばすように カオルさんは
『私 もう こういう関係を続けるよりもやっぱり同棲したほうがいいと思うわ』といいながら
上半身を起こし 裸の胸を露出させながら 髪をかきあげていた。

というのが僕の彼女との過去であった。


昨日 僕の元に電話があった。
カオルの生徒で 名前は『ミオ』という。
尤も同棲しているからには 携帯以外の二人共通のNTTの電話もあって
カオルはさばけているから 同じ電話番号でいいわよといいながら
携帯以外の番号はこちらにしている。
というわけで 時々彼女の生徒からこの番号にかかってくることもないわけでもないで
僕は ミオちゃんからの電話について 特別どうこうとも思っていなかった。

『あの カオル先生・・ いますか』
『まだ帰ってきていませんよ』
『あの・・・ もしかして 先生の彼氏ですか?』
僕は最近の若いこの多少ぶしつけな言い方に驚きながら
『まあ そうですが・・』と話をあわせた。

『あの・・・』向こうは少し沈黙して
『あの 私 相談があるんです』と切羽詰った声で言った。
『でも 君はカオルに用事があるんでしょう?』と事務的に答える。
『はあ そうですけど・・』なにやら向こうは真剣らしい。

『あの・・・これからあえないでしょうか』という大胆な質問まで20秒くらいかかったかもしれない。

え 僕と会いたいの?という疑問が頭のあちこちから沸いてきて
『何か!?』という非常に冷たい言い方をしてしまった。
『私 カオル先生がとても好きなんです』という嗚咽を聞いてしまった。

カオルを好き?それほど?女性が?
僕の中では非常に驚いたしだいで。
あまりに彼女が泣くので可哀想になって
電話口でおろおろしながら このまま切るわけにもいかないし
事が事だけに 興味もあって
新宿で会うことにした。

君の姿がよくわからないから何か目しるしある?といういかにも
雑誌によくあるような口説きで彼女と待ち合わせした。
ミオは 赤いコートを着てJR新宿駅東口改札の出る前で待っているという。
普通の男が初めて会う女性の胸をときめかせるのと同様に
僕も三鷹の駅を出る頃には 随分と浮かれていたものだ。

時間は夕方18時。居酒屋もバーもこれからという時間である。
ミオは僕を待っていた。約束どおり新宿東口改札前で。
彼女は線が細く 所謂バレエを習っている少女で
小柄で ちょっとつらいことがあればぽきんと折れそうなくらい
たよりなさげであった。
そういう雰囲気を見て僕は なぜか この子は守ってあげたいタイプだなと一人で遠くから眺めて思った。

ミオが僕に近寄ってきて
『良さんですよね』って上目遣いで見た。思わず 『はい そうです』といった僕は間抜けだっただろうか。

『相談があったんだよね カオルのことで』というと
ミオは 『カオル先生のこともそうだけど なんだか最近先生冷たいの・・』と彼女は
赤い手袋を重ねて ふう・・と息を吹きかけながら僕の様子を盗み見た。
まだ12月とはいえ 既に風は寒いから カオルのことは好きだけど
そうそう他の女性から誘われるという曖昧な関係もあることないので
僕はこういう流れを大切にし そしてまたその赤い手袋を記憶に残して
『何か食べようか』と カオルとナラシテキタ今までの教訓を生かしながら
このかわいい小鳥のような彼女をどうしようかと思案していた。

僕らは 靖国通りにある普通の居酒屋に入って
彼女がカシスオレンジ 僕は親父くさいウーロンハイなどを頼み
彼女の話を聞くことにした。

席について ドリンクが来る前に
ミオは 『良さんは知らないかもしれないけど先生 私と恋人なの』と
突然言い出した。
僕は愕然として 
『そんなことあるわけないじゃないか』と ミオに対して
初めてあったのに とても怒りがこみ上げた。
多分 この怒りというのは 僕にも意識してない嫉妬だったのだと思う。
良さん ごめんなさい
と ミオは両手をひざにおいて 彼女の美しい白い首をうなだれさせた。
僕は こういった光景をみたことが何度かある。
そうだ。カオルが僕の知らない男から電話や、メールをもらったあと
なぜか僕にばれた時、彼女はいつもさばさばしているのにも関わらず
そういう時は 妙に女っぽくて白い長い首をそのときばかりヘアスタイルはアップにして
悲しい顔をして 一言『良、 ごめんね』というだけなのだ。

僕はそういうカオルを思い出して ミオがなにをいってるのかわからず
でも ミオは僕の動揺を無視して続けた。
『11月10日 先生は私とセックスしたのよ』という。
『その日の朝 良さんは先生とセックスしたでしょう?』という
なんで 僕とカオルがセックスしたのを君が知ってるんだい?かおるが言ったのか?
といっても
いえ 先生はそんなプライベートなことは言わないの。という。
私は全て先生を通して感じるのという。
とその前に 僕は彼女の前で動揺を隠すことが一番の優先事項であった。

僕はカオルがレズなんて聞いてないし。そんなこと想像もできない。
ミオは続ける。
先生はとっても優しいのよ。まるでおねえさんみたいに。
私を愛撫してくれるの。とミオはうっとりと夢心地に語った。
先生とセックスすると 男なんて嫌だわって思うのよ・・
先生は 良さんとセックスしたあとにだけ私を抱くの。
先生なんでそうなの?ってたずねると
私 一人の男にだけ 脳を奪われるのがとてもつらいのって
泣くのよって。
ミオは僕の混乱を見抜きもせずに
カオルとのセックスを思い描きながら 嬉しそうに語った。

私 カオル先生とセックスしても自分にペニスがないから
本当はどれだけ先生を独占しているか
先生を気持ちよくさせているか分からないんです。
だから 良さんがうらやましい。わたしもペニスをもって
カオル先生とセックスしたいって思うんです。
とミオは別れ間際にゆっくりと言った。

いや うそだ。僕のカオルはセックスは好きだけど 
女性とはセックスしない。
という変なくくりに締め付けられてカオルとミオの僕にとっては嫌な妄想だけが湧き上がり 二人が同じベッドで蛇のように
絡み合っている姿を想像して
家に帰ってもカオルの顔を直視できなかった。

実際 カオルに本当にそうなのかどうなのか
聞けば済む話だと笑われそうだけど
もし そうよ と言われたら
僕の気持ちはどうなってしまうか分からない。
だから 僕はいつも通りに カオルと接するように努力した。

ミオから暫く離れて僕の気持ちは再び安穏としたものになった。

ある日 玲子から電話がかかってきた。
玲子の友達の雪見が僕に会いたいという。
大体僕はそれほどモテルタイプじゃない。
仕事はIT系だし おしゃれでもないし気の利いた会話ができるわけでもないし
セックスだって それほど上手いともおもっていない。
なのに なぜ カオルと付き合ってからこうも他の女性から
誘いが多いのか常に不思議ではあったが
やはり 男の悲しい性でもあるのか
誘われたら それほど気にかけないというか
かわいかったらいいなというか。
全く男は単純だ。

僕は 玲子と約束をし その雪見とあった。
名前のように雪のように白い肌ときめのこまやかさを持った女性だった。
雰囲気は カオルににて 最初は女性らしさを感じたが
ご飯を食べたり飲んでいるうちに彼女の中の少しの男性らしさを感じて
僕は雪見というよりか カオルに近い存在に感じた。

以前のように玲子は彼氏と会うからといって
途中で消えてしまう。。
僕は初めて会う人とはあまり会話がはずまないしどうしていいかわからない。
それで 雪見が 
『良さんって 三鷹に住んでいるって玲子さんから伺いました』という。
『私 荻窪に住んでいます。だから 新宿よりも荻窪で飲んだほうがいいです』
と言う。
僕にしてみれば なるべく三鷹に近いほうが願ったりかなったりで。
それで 玲子はやっぱり彼氏と約束があるから帰るというし
雪見は僕と荻窪で飲もうというし。

僕も男で馬鹿だと思ったけど
この雪見もまたなかなか非常に可愛くて 僕のストライクゾーンの
タイプじゃないけど
普通の男だったらかなりいい路線に思うだろうと彼女の横顔をちらっとみて思った。
僕的には カオルと暫くセックスしてなかったから
雪見がタイプとかそういうんじゃなくて
単にたまっていてやりたかったらというのが本音でもあるのだけど
雪見が荻窪について良さんもう一件行きませんか?と誘ってきたときは
カオルには悪いけど 『最近 オレってついてるぜ』って思ったくらいだ。

荻窪で飲んだ後、どうせ今日はカオルが友達の家に泊まるからと
言っていたのを思い出し、
酔った勢いもあって これから三鷹に来ない?と
僕は大胆に提案してしまった。

しかし 雪見とセックスして驚いたのは
その前も最中も後も カオルのことしかたずねてくれない。

良さん カオル先生はどういう体をしていますか?
どういう胸をしていますか?
どういうさわりかたをして どういう感じ方をして
どういう声をもらして どういう視線を送り
どういう腰を動かして どのように果てるか 
妙に入細に詳しくきかれた。まるで刑事の尋問のようであった。

そこで 僕としてもミオのことがあったのでなにげなく雪見にたずねた。
『もしかして 君 カオルとセックスした?』
僕の直感だった。

雪見は驚いて 私 先生の彼氏にそういうこといわれるなんて思ってもみなかったといい
目を伏せた。

僕は真剣にもっとカオルを知りたいと思い、
『いや 僕は別に気にしているわけじゃないんだ』といかにも平静を装い雪見をまっすぐに見た。

そしたら 彼女はほほを高揚させ 宙に視線をやって
『カオル先生とのセックスはいつも とても気持ちいいし、
 あれ以上のものはないとおもう』と 雪見が言うので

僕は思わず
そんなカオルと雪見との間に嫉妬をして
心の中では そんなことあるはずがないとおもいながら
僕は 雪見をいろんな体位で攻めた。

彼女は物凄く感じて 何度もエクスタシーを味わい
その度にごとに 体が痙攣して 白い肌が興奮で汗ばみ
僕も彼女につられて というより 彼女にうつされたように
我慢していたものが一気に爆発した。

僕は雪見が不思議だったので
『もしかして君 カオルの恋人なの?』と。
僕は男ながら屈辱を隠しえない。しかし、カオルの全てを見てみたいという欲求もある。
雪見は
『カオルと私はもう5年も付き合っていますけど カオルが最近
良さんという男性と 
付き合い始めて彼女の体が変わったので
嫉妬を感じたんです。
それで 私はあなたに興味を覚えたの』

『興味を覚えたから僕とセックスしたっていうの?』
一度肌を合わせた関係になると 割と核心をついた台詞が出てくる。
『良さんとセックスというよりも 良さんを通してカオルとのセックスを位置づけたかったのよ』
と雪見は  
『タバコ吸ってもいいですか?』と僕に尋ねた。

僕もカオルもタバコは吸わないので
仕方なく 台所の奥においてあった灰皿になりそうなふるいお皿を
彼女のタメに持ってきた。

雪見は 枕元に置いたバッグの中からごそごそとバージニアスリムを白い細長い指で取り出し、シルバーに光るライターで火をつけ
思い切り深く吸い込むと 暫く時を止めて 煙を吐いた。

カオルはあなたの前ではタバコを吸わないのね
と一言いい、

そんな彼女に見つめられて 僕は
カオルという女が またわからなくなってきた。
一体 カオル本来の姿はどれが本物なのだろうか。

僕はカオルの事を考えると脳みそがごちゃごちゃになって
こんな思いをする位なら 彼女と別れた方がいいのだろうかと
想うけど、いや 僕には彼女と別れることはまだできそうにない。

(終わり)

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修羅場 1

修羅場

私が綾瀬さんと付き合ったのは 彼がまめにお店に来てくれて
そして 私に対しての接し方と他の女の子への接し方を
明らかに差をつけてくれたことで。

来るたび来るたび 私と一緒に帰りたがっていたのだけど
私はそれが 遊び だと感づいていたので
そうそう 一緒に帰ったこともなく
裏口からそっと出て行ったり、ママと用事があるとか言ってみたり
のらりくらりとはぐらかしていたのは事実でした。

何故 そんな私が綾瀬さんとこんな仲になってしまったかというと
あんまりしつこく 誘うから 一回くらい 一緒にご飯食べてもいいかなと
軽く考えて 焼き肉を食べに行ったんだけど
別になんか 面白いわけでもなく おいしいわけでもなくて
さて 家に帰ろうかなと 思ったところ

綾瀬さんが ちょっと酔った感じで
『ホテル行かない?』と誘ってきたので
やっぱり こいつ それが目当てか と思い、
ここで 演技が必要だなと 私特有の勘が働いて。

私 そういうことしたら 綾瀬さんを忘れられなくなっちゃうって
上目遣いで 彼の胸にもたれちゃったんです。
そしたら すっごい彼 動揺しちゃって
見てておかしくなるくらい 心臓もドキドキ聞こえてきて

どう態度に出るかなって観察してたら
『じゃ、電話番号だけでもいいから教えて』っていうので
私は 『今 携帯修理に出して(嘘) 手元にないのよね』って言ったら
彼が 真剣に 本当真剣に
『じゃ、携帯戻ったら 僕に電話して』って
胸の内ポケットから 手帳とペンを出して
さらさらって 書いて びりって破って
私にくれたんです。

その仕草がなんとなく 決まっていて。
なんていうか スマートっていうか。
で 翌週 嫌なお客について ボトルあけなくちゃならなくなって
私はあまり飲めないんだけど のんでいるフリしても
ちょっとずつ なんとなく 酔っ払ってくるって言うかな。

それで 少し酔ったところでボトルもあいて
お客も新規入れてくれて、ヤレヤレと思ったら
何となく 綾瀬さんの声が聞きたくなって
彼の携帯に お店から電話したんです。

そしたら 留守録で。
しょうがないから 『なんとなく電話してみました』って録音しておいたの。
そしたら なんと次の日 お店に来てくれちゃって。
私を指名で呼んでくれたのはいいんだけど
『昨日 どうしたの?』って優しく聞いてくれたの。
それで なんとなくね 声が聞きたかったのよって
ハーパーの水割り作りながら 答えたんだけど

それで 『携帯の修理終わったの?』ってすっかり騙されたままで
しょうがないなあ 可愛いなあって 思って
私 『携帯電話番号はこれよ』って 私の名刺の裏に書いて渡してあげたの。

で また翌週の真ん中くらいに 綾瀬さんから連絡があって
土曜日 忘年会の帰りだから その後 葛西に寄ろうかって。
じゃ 一緒に夕ご飯食べない?って提案したら
いいねっていうから。

彼は彼で 忘年会の後、普通なら2次会行くのに
上司から 綾瀬 次行くぞって 言われても
いや 僕 これから用事がありますからって
妙ににやけて(これは後から彼の後輩から聞いた話)
そそくさと チケット買って人形町の地下鉄の階段
降りちゃったんだって。

それで 私たち 西葛西のイタリアンに入って
綾瀬さんは 忘年会であまり食べなかったって言ってたから
軽く オードブルとワイン飲んで。

いつもワインなんて 飲めないんだけど
今日はちょっといいかなって 飲んでしまったら
これがまたおいしいワインで 結構行けてしまった 笑。

会計済ませて 綾瀬さんがこれからどうする?って聞くから
もう 遅いし 今日はお互いに帰りましょうって言ったら
じゃ 送るよっていうので
私 自転車だから ここでいいのよって言ったら
僕が 前に乗るよって。

冬で寒くて フラノのコートなのに
そのばりばり営業マンサラリーマンスタイルで自転車乗るって
なんだか すっごいバランスが悪かったんだけど
私にしてみたら 新鮮で 笑いながら
ありがとう って言って
私は 後部に乗って
綾瀬さんの背中に 頭をもたせて 彼のわき腹から前に
腕を組んで なんだか しあわせだなあ って思っちゃったの。

そしたら 綾瀬さん
『美希ちゃん ホテル行かない?』ってまたいうから
『綾瀬さんって めげないね』って笑ったら
結構真剣で でも 黙ってしまって。

私 彼とは遊びのつもりだったから
まあ 一回くらいいいか と軽いつもりで
『いいよ』っていっちゃったの。
返って いいよって言われて 綾瀬さんが驚いていて
本当にいいの?っていうから 彼の背中越しに
うん って うなずいてあげたの。

私たちが乗った赤い自転車は 信号を右折して
ホテルまで 着いた。

音もなく静かに自動ドアは開き、
闇に浮かんだパネルの中から自分たちの好みの部屋を選び
無口に私たちは エレベーターに乗り
廊下の小さなライトに導かれて 自分たちの選んだ部屋に入ったの。

青い部屋だったなと思う。
それから お風呂に入ったんだけど
綾瀬さん どうしていいか わかんなくて
そりゃそうだよね。駄目でもともと って感じで
私を口説いて そんな女が 軽くいいよって言ったら
なんか 夢でもみてるみたいって 彼がいうから

夢じゃないわよって
長い長いキス。ブレスしながら 向きを変えて
甘くつまんだり ちょっと吸ったり 舌を絡めて交差したり。
私が上になって 彼にキスしてあげたの。
(続く)

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母が血相を変えて 私を捜していた頃
私は男の腕の中にいた。
それは 背徳の湿った匂い
いつ終わるともわからない けじめのない関係

二度目に抱かれたのは、丘の上のホテル
鬱蒼とした緑の森の奥
その場所はある。
まるで 私たちのために息づいているような場所

三度目に抱かれたのは破船の中
闇の中で軋む私の思いと同じく
壊れかけた床からは 潮の香り
男の肩越しからは 満天の星空

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止まらぬ妄想 2

僕の課が とても忙しくなってきたので
部長が新しく派遣を雇おうと提案してきた。だから また僕は面接をして
新しい女性に来てもらうようにお願いした。

その彼女の歓迎会が昨日あった。
幹事は 僕の部下で高橋君というのだが彼はまだ25歳で
入社3年目 まだ若く僕の言うことをマジメに受け止めてくれる
とても いい社員だ。

高橋君は 女性たちに歓迎会のことを伝えた。
僕は高橋君にみんなの反応はどうだったかと
たずねたら、みんな来ますと言ってましたと歯切れのいい返事が返ってきた。
みんな来ますというから オオタカさんも来るのだろう。
当日 オオタカさんは千葉支社にお使いがあって出かけていて
現場へ直行するといっていたと高橋君が僕に連絡した。
高橋君は 仕事の絡みでオオタカさんと話をすることが多い。
僕は 高橋君に嫉妬するくらいうらやましいと思う。
僕もオオタカさんと一緒に仕事がしたいが 課長職なので
仕事はできない。単に指示をあたえることだけだ。

僕は 歓迎会の前日、妻に今日は歓迎会だから遅くなるよと伝えておいた。
そういえば 妻は夕食も作らないし、早く寝る。
結婚10年目ともなれば 新婚の時のようにいつまでも待っていることもない。
お互い自分の健康が第一なのだ。

僕は 歓迎会の日 朝からなんとなく気分がうきうきしていた。
オオタカさんと夜会うのは オオタカさんの歓迎会以来だからだ。
オオタカさんが酔うと 頬が赤くなって少しセクシーだ。
高橋君が座席表を作って 僕に見せる。
夜は こんな感じで並べばいいですか?
オオタカさんとは席が遠いが どうにか移動して近くに座ることもできるだろう。
なぜなら 僕にはオオタカさんが不思議な人にみえて仕方がないのだ。

離婚して 子供がいるということを以前聞いたけど
それなのに どうしてあれだけ美しくいられるのだろう。
どうして あれだけ若くいられるのか。
以前 彼女の歓迎会で寄った勢いで オオタカさんは子供がいるようにみえないですねって 
事務の女性が言っていたけど 僕も強烈にそう思う。
歓迎会で聴いた話だけど 子供を一人で育てているそうだ。
残業があっても きちんとこなしていくし、弱音は絶対はかない。

僕の妻と比べてみても そう年は変わらないのに
雰囲気とか 物腰がまったく違う。
これはどういうところから来ているのだろうか。

さて 僕は歓迎会でもオオタカさんが気になって
遠くからみていたけど、オオタカさんが 新しく勤め始めた新座さんに
挨拶をしにきた。当然僕のそばにも来た。
僕は普段こうみえて シャイなところがあるので
酔っていないと オオタカさんに用もないのに話しかけることはできない。
新座さんは 先週結婚したばかりといって、少しお惚気の入った話を
オオタカさんにしていた。

僕は 話の流れでオオタカさんに
オオタカさんは 結婚しないの?と聞いてみた。
オオタカさんは くすりと笑って
どうして 男性は同じことを尋ねるのでしょうね。
と やんわりとかわされてしまった。
オオタカさんは まるで柳に風のように
あまりはっきりと答えてくれない。本当はどういう人なのか
僕は毎日気になっているのだ。

2件目みんな行くというから オオタカさんも来るのかなと
楽しみにしていたのだけど 高橋君に尋ねたら
子供が待っているから帰りますと 帰ってしまったようだ。
僕は少しがっかりした。
少し酔わせれば オオタカさんの本音が聞けるかもと思ったのだけど
そう簡単にはいかなそうだ。

2件目は 参加した女性が少なかったせいもありいつもの男たちとの
飲み会のようになって つまらなくなった僕は
11時に先に帰って 柚子の店に行き また彼女とホテルに行ってしまった。
僕は 彼女を抱きながら オオタカさんとえっちしている気分にいつもなるのだけど
名前は間違えないように 気をつけなければならないのが少し苦痛だったりする。

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止まらぬ妄想

僕は結婚して10年になる。
子供は2人いる。
妻とは社内恋愛で 結婚した。
僕が勤めている会社は一流企業で いわゆるエリートで しかも僕は課長だ。
おととし、東京の郊外に家を買った。

今のところ 安定して不平はないのに
なぜか 彼女に惹かれた。
彼女は 先週僕の働いている会社へ派遣社員として来た。
5人面接をしたのだけど 僕の好みで彼女だけを採用してしまった。
これは他の社員にはいえない。彼女を選んだのは
仕事ができるから という理由だったけど
本当の理由は僕の好みだからということなんだ。

彼女のそばに行くと どきどきする。
まるで少年みたいだと僕は思う。
彼女は若くはない。僕は彼女の年齢を知っているけど
見た目 30歳前半にしか見えない。遠くから見たら
20代後半にしか見えない。
しかし 話をすれば 僕と同じ世代だ。

家庭も仕事もそれなりに安泰だと 他に刺激を求めるのが
男なのかもしれないと最近思う。

とはいえ いくら彼女が気になったとしても
僕は結婚しているし、彼女は派遣社員だし
食事に行くわけにもいかず、普通に廊下で話すのもおかしいし
なにか理由をつけて 話しかけはするけど
でも 話が終わったらすべてストップだ。

こういった悶々とした毎日を送っていたある日
得意先の接待があった。
食事会はわが社がもったけど 話が盛り上がって
もう一件行きましょうということになった。
もう一件は 得意先が持つという。

僕は そのもう一件の店に行って
となりについた女の子見て驚いた。
彼女だと思った。
それくらい似ていた。心臓がどきどきした。
今までちょうどよいくらい酔っていたのに
酔いが醒めそうだった。
双子じゃないかと思うくらい似ていた。
話し方もそっくりだ。

でも その女の子は 僕を見て僕と話して
なんら驚いた様子はない。
初めましてと言って席に着き
いただきますといってビールを飲む。
そして僕の話を面白おかしく聞いて 笑っている。
店のマニュアルのように カラオケでもいかがですかと
歌の本を持ってくる。

僕は彼女が気になって気になって
歌どころではなかった。

ジャックダニエルの水割りを飲んで 結構気が大きくなってきて
初めて会ったというのに 僕は彼女に尋ねた。
『彼氏いるの?』
『いないですよ』彼女は笑って答えた。
『どこに住んでいるの?』
『石神井です』
『練馬か』『そうです。ここからはちょっと遠いのですが』
そういえば 会社のオオタカさんは 浦安だと言ってた。本人じゃないと
当たり前のことを当たり前に思ったのだけど
アルコールが前頭葉を侵食し始めて
当たり前のことがそうでないような気がしていた。

彼女の名前は ゆずと書いて柚子(ゆうこ)と言ったが、
店では ゆずと呼ばれているという。
とにかく 僕は彼女にオオタカさんの影が重なって
オオタカさんと恋愛ができないから 彼女を好きになってしまった。

男は勝手な生き物だ。
A子が駄目ならB子でもいい。いくら大好きなA子が振り向いてくれないなら
2番目に好きなB子がよくなる。
今日 2番目でも明日は1番になってしまう。そして付き合っているうちに
B子がベストになってしまう。

しかし 僕には妻と子供がいる。
今は 腕の中に柚子を抱きながら、勝手な僕は勝手に暴走してしまった。

3回 みんなに内緒で柚子がいる店に通った。
3回目 僕は彼女を店が終わってから すし屋に誘った。
なんだか 遊びなれたうちの部長みたいだけど
どうやってそういう店の女性をくどいていいかわからないから
部長の真似をするしかなかったのは 真実だ。

柚子だか オオタカさんだか時々区別がつかなくなるくらい
似ていた。本当はオオタカさんがこの店にアルバイトに来て
柚子だと名乗っているのじゃないかと妄想したりもした。

だから 会社にいて オオタカさんに用事があって
彼女と話すとき 僕は異常に興奮してしまうのだ。
オオタカさんと話すと 柚子とのえっちなことを想像してしまう。
オオタカさんの胸やおしりを さりげなく見る。
オオタカさんを後ろから抱きしめてみたいという妄想が膨らむ。
そんなことを考えると エンドレスだ。
仕方がないので トイレの個室に入って
僕のえっちな想像を一人で処理するしかない。
そうしないと 止まらないのだ。特にゆうべ柚子にあった日には
彼女との行為がすごすぎて それを引きずってしまうのだ。

本当は彼女と一緒に朝まで過ごしたいけど
妻にばれたら 柚子と恋愛することも駄目になってしまう。
朝までいて 朝ももう一度したいくらい柚子との恋愛は最高だけど
朝までいたら 会社に行きたくなくなってしまう。
とりあえず 朝の前に柚子と別れて 会社にいけば
オオタカさんがいる。
オオタカさんは 冷静だ。僕の指示を事務的に受け止める。
僕はオオタカさんと話すと どうも左の口があがってしまって
にやけそうな顔になるのが こわい。

結婚して他で恋愛しているなんて
口が裂けてもいえないけど、言って自慢したくなるときもある。
へえ 課長ってもてるんですねとか 言われてみたい。

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心の裏側

困ったわ。今日 夫が一日早く出張から帰ってくるの。響子 うまく私のアリバイ作ってくれないかしら?
また 沙希から電話がきた。
最初の沙希からの頼みはもっと低姿勢で それほど頼むならやってあげてもいいなと
ちょっとしたゲームのつもりで承諾したが、最近では軽く依頼する沙希に対して
響子はうんざりした気持ちになっていた。
佐川響子と高山沙希は クラスは違うが高校の同級生であった。
高校3年間違うクラスですごしたが 偶然にも大学のとき、同じスキーサークルに所属し
高校のときは 口もきいたことがなかったが大学に入ってから親しくするようになった。
沙希は高校当時から他校の男子生徒からも交際を申し込まれたほどの美貌であった。
彼女の父は 大病院の院長で小さいころから何不自由なく育った。
現在 沙希は夫と 子供の4人暮らしで週に3回ほど通ってくる家政婦もいる。
夫は一部上場企業の取締役で 彼女はとても裕福にくらしている。
一方 響子は普通のサラリーマンの家庭に育ち
成績は中の上ではあったが 別にこれといって目立っていたわけではなかった。
お互い既に32歳になり、少しずつ若さが薄れかけているが
お金持ちに生まれお嬢様として磨かれ そしてさらにまた
財力のある夫のおかげで 沙希のなにもかも上品であった。
それは金銭的にゆとりのない響子からは羨ましい限りである。
『ねえ、響子はなにかマッサージとか美容についてやっている?』
沙希は 響子の家庭を察するわけでもなく、何気なく言ったが
響子にはこの言葉が癇に障った。
高校のときは 彼女の美貌にあこがれていたが
こうやって目の当たりに彼女と接するにつけ 彼女の一挙一動が
ねたましくなっていった。
響子は 3年前に夫と離婚し 女手ひとつで子供を一人育てている。
高校のときから、沙希のことを影ながら知っていた響子は 
沙希が羨ましく 憧れでさえあった。
沙希は 大学在学中から 知人の紹介で現在の夫と出会い
年齢こそ12歳と一回りも違っていたが熱烈な交際を経て
21歳という若さで学生結婚した。
響子は 大学のときから付き合っていた男性と6年付き合い 子供ができてしまったので
結婚したが、彼の浪費癖と酒癖に家庭はいつも火の車であり、夫に愛人ができたとわかったとき
もともと 夫との結婚に嫌気がさしていたので、彼女はあっさりと離婚を切り出していた。
かねてから 貯金などなく、金銭的にだらしない夫は養育費を出すこともできず
彼女は 昼は子供を保育園に預け、証券会社で働き、夜は銀座のホステスとして
身を粉にしながら 働いた。
離婚のときは 貯金などなかったが、ここ3年でゆとりもでき、ホステスとして稼いだお金で
小さいながらも雑貨屋を営むこともできた。
銀座で働いていたときに知り合った桂木から、店を始めるとき500万をもらった。
桂木は 大手建設会社の役員で、次期社長とうわさされている人物であった。
他の客とは違い、なぜか 響子とデートしても肉体的に迫ることはしなかった。
沙希から
『ねえ 響子 今夜優哉と久しぶりに会えるのよ。響子の家に行っているってことにしてくれない?』
さらに甘えた口調で悪びれもしない。
今月にはいって3回目というのに、どこが久しぶりなのだろう。
響子は少し沙希を困らせてやりたくなった。
『沙希 ごめんなさい。今日はどうしてもだめなのよ。昨日のうちに言ってくれたらよかったのに』
『そんなこと言わないで。お願いなの。』ちょっとした泣き声まで聞こえてくる。
『いや ほんとうにごめん。』と言って 響子は無理やり電話を切った。
その夜遅く、高岡幸一から電話があった。沙希の夫である。
夕方の電話で 響子は沙希の依頼をきっぱり断っているから
まさか電話がかかってくるとは思わなかった。
いったい何事だろうと思った。
幸一は普段は妻が大変世話になっていると告げた後、
沙希を出してくれという。
『沙希 今日はここにはいませんよ。なにか?』とたずねたあと
『妻は 響子さんの家に同窓会の件で打合せに行くと言ったのです。』
と幸一は続けた。
いったいなにがあったのですか?と興味本位で沙希は尋ねた。
実は息子が入院しまして・・・どうも具合が悪くて・・・と歯切れが悪い。
『うちにはいないですが 心あたりを探してみます』と言って
響子は電話を切った。
普段 会社では堂々としているだろう幸一がおろおろしてるのが目に浮かぶようだった。
世の中は不公平だ。こうやって同じように生まれて生きているのに
沙希ほど裕福で恵まれていて おまけに愛人までいておかしくないか。
そして 私は いつも沙希の尻拭いばかりしている。
老いが忍び寄っている自分の顔をまじまじと眺めた。
沙希が 裕也とあっているとき、携帯を切っているのを響子は知っている。
念のため 沙希の携帯にメールを入れておいた。
明日の朝 これを見た沙希はどう思うだろうか。
想像しただけで わくわくした。
今まで一度もつらいことなど味わったことがない沙希の顔が歪む。
まさか 響子がこんな悪巧みをしているなんて沙希はこれっぽっちも思っていないのだ。
万が一 沙希から深夜のうちに電話があると困るので
響子もまた 携帯をOffにして寝てしまった。
翌朝土曜日、朝早くから電話が鳴った。携帯はOffにしてあったので、仕方ない、家の電話をとる。
もしもし。。。
と 響子が言った。
案の定沙希からだ。
響子、どうして口裏合わせてくれなかったのよ。と半ば興奮気味である。
なんかあったの?
響子はしらばくれた。
昨日 夫から電話があったんでしょう?
うん それは 沙希の携帯にメールでいれておいたよ。
そうじゃなくて。。
私は沙希に断ったじゃない。無理だって。それなのに、私の名前を使ったの?
あきれたと言うように 響子は言った。
だって 今まで何もなかったから今度も大丈夫だろうって思ったのよ。
で どうだったの?
私が外泊続けたからって 夫ったら 興信所で私のことずっと調べていたのよ。
と 沙希は泣き出した。
その調査 昨日が4回目だったんだと言う。
じゃ 私が沙希のことかばったって ばれていたんじゃない?
続けていう響子に 沙希は何も言わなかった。
それからしばらくして沙希からはなんの連絡もなく、響子は穏やかに過ごしていった。
ある日 桂木から電話があり 食事に行かないかと誘われた。
何の刺激もない生活を送っていた響子は 飛び上がらんばかりに喜びを表し、
約束の場所まで出かけた。
そして 桂木は 実は友達とねえ 新宿の怪しい風俗の店にいったんだけどねえ
そこに新しい女性がいてねえ。それがまたすごい美人なんだよ。
へえ 怪しい店ってどういうのなの?と 響子はたずねた。
それはさあ なんていうか、いわゆるソープだな と くくっと夕べを思い出すかのように
桂木は笑った。
いやらしいわねえ と 響子はストローを加えながら笑いをあわせた。
興味があったから指名して、いろいろ聞いたらねえ、君と同じ大学で。
世の中狭いわねえといい、
これが彼女の写真なんだ と 少し自慢気に桂木は写メールを見せた。
そこには 沙希の姿が映っていた。化粧も濃く、ドレスも派手だが
それでも上品さを失っていない沙希は 他の女性たちよりも目立っていた。
知っているか?
知らないわ。
同じ大学だっていうから 知っているかと思ったけど。
同じ大学だからって 知っているとも限らないでしょう?で 彼女がどうしたっていうの?
急にむっとしたら おかしがられるから ポーカーフェイスを気取って
響子は続けた。
でも 大体そういう店で ほんとうのことなんていわないし、写メなんて
写させないんじゃないの?と響子が言ったら
いやさ 僕も写真なんて撮ってもいいのかなって 少し腰引き気味でいったんだけど
指名が増えればいいからって 言ってたよ。
お友達にも紹介してくださいねって。
変な女ねえ。と響子が続けると
あういう商売も今は低迷期だからね、給料も安いらしいよ。
ところでさあ と響子は話題をかえた。

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